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有償資金協力(円借款)関連事業

円借款とは

 円借款(有償資金協力)は、日本国政府が開発途上国の社会・経済発展を支援するために行う政府開発援助の一つで、独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施しています。低利で長期の緩やかな条件で開発資金を開発途上国に貸し付けることにより借入国の発展を支援するものです。また、無償資金協力とは異なり資金の返済を求めることで、借入国に資金の効率的な利用と適切な事業監理を促し、借入国のオーナーシップを育てます。借入国は、この資金を使って、電力、上下水道、運輸、通信等の社会インフラ整備や貧困削減、地球規模問題への対応、人材育成等の事業を実施しています。これらの事業において、借入国は、定められたガイドライン等に従い公正性、透明性、経済性、効率性を確保した調達手続きを行うことになります。
 JICSはJICAとの契約により様々な業務に従事しています。

国内業務

 JICSは調達関連書類一次チェックをはじめとする円借款事業において調達手続きに不可欠な書類の確認・監査業務等を通じて円借款事業の適切な実施に貢献しています。

1.調達関連書類一次チェック

 調達関連書類一次チェックは、円借款事業を実施する過程で借入国政府が作成する入札書類、入札評価報告書、契約書等の調達関連書類がJICAガイドラインや標準入札書類等に沿っているかを確認する業務です。プロジェクトを実施する際には、例えば建設案件であれば、まずプロジェクトの対象となる建設物の設計・施工監理を行うコンサルタントが公募で選定され、その後、建設工事を行うコントラクターが入札で選定されます。コンサルタント選定には、招請状(Request for Proposal)や契約書等、コントラクター選定には、技術的・財務的に能力を有する企業であるかを判断する事前資格審査書類や入札書類、契約書等が必要となります。JICSはプロジェクトの進捗に合わせて作成されるこれらの書類を効率的に確認し、チェック結果及び改善点をわかりやすく所定の英文報告書にまとめて期日内(書類により3〜7営業日)にJICAに提出します。

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情報共有のためのミーティング

 JICSは長年実施してきたコンサルタントやコントラクター等の調達手続き業務の経験を活かし、プロポーザル競争により2004年度から本業務を受託しています。借入国にフランス語・スペイン語圏の国も含まれることから、英語・フランス語、スペイン語に堪能で、調達手続きに精通したスタッフが担当しています。2016年度までは、南西アジア・中東・欧州・中南米・アフリカ地域の国々を中心に受託していましたが、2017年度からは円借款対象国全ての国々の一次チェックを行っています。2004年4月からこれまでに5,000件を超える調達関連書類をチェックしています。

2.調達事後監査

 調達事後監査は、コンサルタントやコントラクター等の選定・入札から契約に至るまでの借入国による調達手続きが、(1)JICAガイドラインに準拠し実施されたか、(2)JICAとの確認・同意手続きが借款契約の取り決めに従って適正に行われたか、を第三者として事後的に監査する業務です。

 この業務は、日本国内で書類を監査すると共に、必要に応じて現地にて借入国実施機関への立ち入り監査を行い、監査結果や課題等をJICAに報告します。

 JICSは、2011年度から継続して同業務を受託しています。

3.標準入札書類等の改訂業務

 JICAは、JICAガイドラインや標準入札書類等をより適切なものにするために、不定期に改訂を行っています。

 JICSは、一次チェック業務等で蓄積した専門知識を活かし、標準入札書類等改訂に関連する以下の業務を受託しています。

  • 円借款調達ガイドライン等の改訂に係る調査
  • 円借款調達制度合理化に係る調査
  • 有償資金協力の調達監理支援
  • 円借款事業にかかる調達監理強化
  • 円借款事業の調達に係る標準入札書類等の改訂

4.外部セミナーへの講師派遣

 JICSは円借款事業にかかる調達関連書類一次チェックや実施促進業務等で蓄積した専門知識を活かし、円借款事業や国際的な調達契約に関する外部セミナーに講師を派遣しています。

 近年では、JICAでの内部収益率(IRR)分析に関するセミナー、法務省でのミャンマー法整備支援プロジェクト本邦研修における国際的な調達契約に関するセミナーに講師を派遣しました。

海外業務

 JICSは無償資金協力での豊富な開発途上国におけるプロジェクト経験および国内での円借款関連業務の経験を活かし、円借款事業の現場で実施促進業務等に従事しています。

1.実施促進業務

 円借款事業において、実施機関が円借款の手続きに習熟していないこと、借入国内の承認手続きが複雑なこと等の理由により、プロジェクトが当初の予定どおりに進まないことがあります。進捗を妨げる要因を特定し、問題を解決し、プロジェクトの円滑な実施を支援するためにJICAは借入国に専門家を派遣します。これらの実施促進業務には、(1)新規案件形成の支援、(2)調達の実施促進、(3)貸付実行促進、(4)債務返済手続きの改善、(5)長期・短期の投融資見込みの作成支援、(6)調達手続きに関する実施機関向け研修の実施等があります。

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インド:
調達書類を実施機関と共同作成

 JICSは、プロポーザル競争を経てJICAとの契約により、ウズベキスタン、サブサハラ・アフリカ諸国(ケニア、ウガンダ、カメルーン、ザンビア、セネガル、タンザニア)に実施促進業務の専門家を派遣しました。また、2016年から2回連続して、南アジア諸国(インド、バングラデシュ、ネパール)へ、円借款プロジェクトの立ち上げを目的としたコンサルタント選定手続き支援を主な業務とする実施促進業務を受託し、2016年には3人、2017-2018年には5人の専門家を派遣しています。円借款供与先として上位国に名を連ねるインド・バングラデシュでは、案件数も多く、プロジェクト実施機関の円借款における調達手続きに対する習熟度も様々であるため、それぞれの実施機関のニーズに応じた支援業務を提供しています。

 さらに技術系コンサルタント会社との実施促進業務の共同受注にも積極的に取り組んでおり、マダガスカルとコスタリカへ、技術系コンサルタントチームの一員として、JICAガイドラインと調達関連書類に関する実施機関向け研修のための専門家を派遣しました。近年では、インドネシアの地熱開発プロジェクト、エチオピアの地熱開発プロジェクト準備調査に技術系コンサルタントチームの一員として、専門家を派遣しています。これらの業務には、円借款調達関連書類一次チェックの豊富な経験に加えて、無償資金協力事業の調達に関する専門性とこれまでに蓄積したノウハウ、さらに無償資金協力での地熱プロジェクトの経験が活かされています。

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インドネシア:
地熱開発プロジェクトのサイト視察
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インドネシア:
地熱開発プロジェクトの入札説明会

2.調査業務

(1) 円借款事業における調達手続き・評価ガイド作成業務

 JICAは円借款事業における適切なコントラクター選定・コンサルタント雇用手続きのための参考資料として評価ガイドを作成しています。

 JICSは、調達関連書類一次チェック業務等で蓄積した専門知識を活かし、円借款事業における調達手続き・評価ガイド作成業務を受託しています。この業務は、現地調査を含む総合評価方式の円借款への適用にかかる調査及びその結果を踏まえた新しい評価ガイドの作成により構成されます。

(2) 公共調達制度調査業務

 円借款事業においては、JICAガイドラインに基づいてコンサルタント選定や資機材の調達手続きを行うことが義務づけられていますが、借入国の法律や調達手続きがJICAガイドラインと異なっている場合、自国の手続きに則して調達を行うことを希望する借入国実施機関との調整が必要になり、手続きの遅延等の問題が生じることがあります。そのため、JICAは、円借款の供与や再開決定前に借入国の体制、法律、制度、ニーズ等に関して、必要に応じて調査を行います。

 JICSはエクアドルにおける公共調達制度調査業務を受託しています。

主な有償資金協力関連業務

 JICSが携わった主な有償資金協力関連業務を紹介します。

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