2009年2月6日

備蓄品の引渡し式の様子（フィリピン） 輸送用トラックに積み込まれる物資（カンボジア） 物資を確認するスタッフ（カンボジア）

　近年、鳥インフルエンザのウイルスが突然変異を起こし、ヒトからヒトに感染する「新型インフルエンザ」が流行する可能性が危惧されています。そのため、「日・ASEAN統合基金（JAIF）」^※１の一部を活用して、ASEAN地域でヒトからヒトへの感染が拡大した場合の迅速な「封じ込め」^※２を実現するための、新型インフルエンザ対策プロジェクトが実施されています。

　JICSはこのプロジェクトに関し、ASEAN事務局と実施代理人契約を締結し、抗ウイルス薬と防護品の調達、備蓄倉庫の手配、備蓄品の管理などを行ってきました。

　これまで備蓄品は、物資輸送の中継地点となっているシンガポールの倉庫で一括保管されていましたが、感染拡大の初期段階でより迅速な「封じ込め」を実現するために、備蓄品の半数がASEAN各国に事前配備されることとなりました。その事前配備品輸送にあわせ、ASEAN各国で物資の受け入れ体制についてのアセスメント（評価・検証）と、緊急輸送時の手続きに関するトレーニング（実地訓練）が実施されました。JICSは、事前配備品の各国への輸送の手配や進捗管理などを担当しました。

　アセスメントとトレーニングは2008年7月から12月にかけて世界保健機関（WHO）が主体となって行われました。アセスメントでは、「各国に物資を緊急輸送する際に効率的に通関が可能となるよう、必要な準備がなされているか」「コンサイニー（荷受人）、新型インフルエンザ対策プロジェクト担当者、空港関係者などの間で十分なコミュニケーションが取れているか」「緊急物資を備蓄する倉庫の管理状況、温度、スペースに問題はないか」などについて、重点的に確認を行いました。このアセスメントにより、温度管理のシステム化やバックアップ電源等について課題のある国がいくつか認識されたため、今後各国において必要な対策をとることを検討しています。

　トレーニングでは、物資を積載した航空機の到着から倉庫への配送が完了するまでの一連の作業を実際に行い、各国の担当部署の役割分担などを再確認しました。JICSは、トレーニングへの参加者に対して新型インフルエンザ対策プロジェクトについて説明を行い、グループワークでは進行役などを務めると同時に、それぞれの国での実際の貨物の受け入れ作業に立会い、必要に応じてアドバイスなどを行いました。今回のトレーニング結果を受け、今後、緊急輸送時に必要な手続きに関するガイドラインがWHOによって整備されることになっています。

場所（国）	期間	備考
マニラ （フィリピン）	アセスメント：11月7日 トレーニング：11月10日、11日	トレーニングの期間中に、日本大使館および保健省の間で備蓄品の引渡し式も実施された。
ハノイ （ベトナム）	アセスメント：7月9日、10日 トレーニング：12月11日、12日	アセスメントとトレーニングが時期を分けて開催された。
ビエンチャン （ラオス）	アセスメント：11月17日 トレーニング：11月18日、19日	緊急用の物資を備蓄する保健省の倉庫は、JICAにより建設された施設。 トレーニング期間中に、日本大使館および保健省の間で備蓄品の引渡し式も実施された。
プノンペン （カンボジア）	アセスメント：11月24日 トレーニング：11月25日、26日	トレーニングには地方の保健局からの参加者もあった。

　2009年3月には、ASEAN加盟国のうち、まだトレーニングを実施していない国々の関係者がマレーシアに集まり、「封じ込め」に備えた緊急輸送のトレーニングを行う予定です。
JICSは、引き続きこの取り組みをサポートしていきます。

※１　日・ASEAN統合基金（JAIF）：ASEAN統合に向けた事業を実施するために日本政府の拠出金（7000万ドル）によりASEAN事務局内に創設された基金。
※２　「封じ込め」：新型インフルエンザが発生した際に、WHOの通報を受けて備蓄品を速やかに発生地に移送し、患者、医療従事者、発生地域の住民等に投与して感染の拡大を防ぐ対策。