ブルガリアは、社会主義体制崩壊後の市場経済化の遅れから、文化活動に必要な設備や機材が十分に整備されていない状態が続いています。首都ソフィアにある国立文化宮殿(NDK:通称「エンデカ」)は14のホールを擁しており、なかでも第一ホールはバルカン半島最大です。
しかし、音響機材の老朽化が著しいことから、ブルガリア政府から要請があり、日本政府は2002年度にNDKに対する音響機材整備のための文化無償資金協力を実施しました。
2010年1月、JICSは外務省の委託を受け、同プロジェクトに対する現状確認およびフォローアップ・修繕などの必要性について調査を行いました。その結果、日本の支援で音響機材を整備したことにより、ホールの音響が格段に向上し、演奏家からの評価も高く、ほぼ毎日機材が利用されていることが確認されました。NDKでは「日本文化週間」を毎年開催しており、両国間の文化交流の場ともなっています。
本調査の主な業務は、現状の確認・不具合が発生していた場合の機材の対応策(スペアパーツの供給や修理技術者の派遣など)の検討と必要な経費の積算でしたが、今回の調査では不具合は確認されず、今後も継続的に活用されていく見込みです。
一方で、調査中に機材操作担当者から「最近増えているロックコンサートでは、スピーカーの音量が不足している」との相談を受けたため、調査団が音圧調整方法などに関する指導を行いました。こうした操作や保守管理に関する指導・助言を行うことで、機材の継続的な有効活用につなげられるよう心がけています。