イラクの首都バグダッド市の北北西約20Kmにあるタジガスタービン発電所、そしてバグダッドから北に約400Kmに位置するモスール市のガスタービン発電所は、一般家庭および学校、病院、役所、水道施設などの公共施設に電力を供給し、人々の生活を支える重要な役割を担ってきました。しかし、1970年代の運転開始から30年あまりが経過しており、老朽化に加え、1991年に発生した湾岸戦争やそれに続く各国からの経済制裁により、改修に必要な機材や部品が調達できない状況が続いていました。また、質の悪い機材や部品を用いて修理を行っていたために、発電機器の発電能力が低下し深刻な電力不足が生じました。
電力供給改善のために、イラク電力省は日本政府に対してバグダッド市内およびモスール市の発電所復旧に必要な資金援助を要請してきました。日本政府はイラク国内の厳しい電力事情をふまえ、2003年10月に表明していた15億ドル(約1,650億円)のイラク復興支援の一環として、タジガスタービン発電所改修のために約73億円、モスールガスタービン発電所改修に約46億円の緊急無償資金協力を行うことを2004年3月に決定しました。
これを受けJICSはイラク国電力省とこれらのプロジェクトに関する調達代理契約を締結し、調達監理や資金管理を実施してきました。
現場は治安が悪く、日本人技術者は現地に入れなかったため、施工監理はイラク国内の業者と連絡を取り合う遠隔操作の形で行われました。発電機器の搬送はタジガスタービン発電所には2006年8月から2007年4月にかけて、またモスールガスタービン発電所には2007年2月から2007年6月にかけて複数回の輸送を行いました。発電機器の中には100トンを超えるものもあり、輸送だけでなく機器組み立て、据付作業中の安全確保を第一に警備要員を配置し、工事を進めてきました。
現場工事を担ったイラク国内の施工業者、プロジェクト関係者の尽力により、タジガスタービン発電所は2007年12月に、モスールガスタービン発電所は2008年3月に無事完成しました。
イラク復興支援は、イラク全土を対象に電力、医療、衛生、治安等、同国民の生活基盤の再建および改善に重点をおいたものです。これらのイラク復興支援を円滑に行うことができるよう、JICSはこれからも努力を続けます。