東ティモールでは、1999年8月のインドネシア政府による拡大自治提案の可否を問う直接投票において住民の約8割が独立を選択したものの、投票直後から独立反対派による騒乱が発生し、インフラ等に大きな被害を受けました。その後、国連東ティモール暫定行政機構(UNTAET)の暫定統治や国連東ティモール支援団(UNMISET)の設置などを経て、2002年5月に独立を達成しましたが、治安維持と一層の経済発展には、依然として厳しい道のりが続いています。
東ティモール政府は、貧困削減及び公平・持続可能な経済成長を目標として、「国家開発計画」および「中期支出計画」に基づき人材育成(教育)、保健、農業生産性の向上、行政の効率化、インフラの整備等に重点をおいた施策などを積極的に実施しています。
このような背景のもと努力を続ける東ティモール政府よりの要請に対し、日本政府は、同国の平和の安定がアジア・大洋州地域の安定にとって極めて重要との認識にもとづき、2005年3月18日、ノン・プロジェクト無償資金協力の実施を決定しました。ノン・プロジェクト無償資金協力は、経済及び社会発展の促進を支援するもので、被援助国政府が、その推進に必要な商品を輸入する代金の支払いのために利用されます。
本案件に関してJICSは、2005年3月30日に東ティモール計画・財務省(現:財務省)と調達代理契約を締結し、同国政府の代理人として、供与された資金の管理、調達品の購入先の選定、契約、納入管理など、案件全体のマネジメントを行っています。
案件実施中の2006年に発生した、ディリ各地での大暴動により中断した時期もありましたが、2010年6月、本案件の調達物品の一つであるX線検査機が同国に到着し、同国西端に位置するインドネシアとのバトゥガデ国境に納品されました。
JICSは、2009年6月にも、東ティモールの唯一の国際港であるディリ港に貨物用X線検査機を本案件において1台調達しています。その際、シャナナ・グスマン首相から、在東ティモール日本国大使館に、「インドネシアとの陸上輸送の要路であるバトゥガデ国境にも是非X線検査機を供与していただきたい」と直接要請され、それが今回実現したものです。
2010年7月16日、バトゥガデ国境でX線検査機の引渡し式が行われました。今回納入したX線検査機は、大型車両がそのまま検査できるような大規模なもので、これを利用することによりコンテナやトラックなどの内部の荷物を外から検査することが可能となります。引渡し式では、テープカット、記念碑への署名などのほかに、貨物を乗せたトラックがこのX線検査機を通り実際の利用方法を紹介してみせたり、地元の子どもたちのダンスも披露されるなど、和やかに進行しました。
財務省歳入関税局のカンシオ事務局長からは、これまで一つ一つ開封して行っていた荷物検査が、トラックに積載したまま行えることになり、迅速で正確な通関手続きが可能になるとともに密輸品の摘発にも役立つ、との感想が届いています。
本案件では、東ティモール国政府の要望に基づき、X線検査機以外にも、電気工事用車両および蚊帳を調達することとなっており、調達手続を鋭意進めています。