チュニジア 
水不足が深刻な南部ベン・ゲルデェーヌ地区に淡水化プラントが完成

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2013年9月12日

 国土の半分が砂漠地帯であるチュニジアは、水資源が限られています。特に、南部ベン・ゲルデェーヌ地区は降水量が少なく(2008年時点の年間平均降水量は180mm)、近隣に水源を持たないため、60km以上離れた井戸水源からの送水や、塩分濃度が高い地下水に頼らざるを得ない状況で、飲料水不足の深刻化が懸念されています。日本政府は、日本の優れた環境技術を活用した途上国の気候変動対策を支援しており、同地区に安定した水供給を確保するため、塩分濃度の高い地下水を日本製の逆浸透膜※1で淡水化するプラントの建設プロジェクトを2010年3月に決定しました。

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奥の白い建物が淡水化プラント建屋、手前に太陽光パネル。淡水化過程でできる高塩分濃縮水を蒸発させる天日乾燥ピットを施設に設けた。(左側)
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淡水化プラント建屋内

 JICSはチュニジア共和国水資源開発公社(SONEDE)の調達代理機関として、プロジェクトを円滑に実施するため、施工会社の選定、プロジェクト実施監理、プロジェクト資金の管理を主な業務として行ってきました。

 両国を揺るがした「ジャスミン革命(チュニジア)」、「東日本大震災」と同時期に調達代理契約が締結され(2011年3月)、本格始動した本プロジェクトですが、その後の施工会社の選定、機材調達・工事では、資材の供給面での遅れや治安上の問題もなく、順調に進捗しました。完工直前にアルジェリア人質事件を受け、工事を一時停止せざるを得ない事態となりましたが、遂に2013年6月に施設が完成しました。

 同月21日には、淡水化プラント構内で、モハメド・ベン・サレム農業大臣、へディ・ベルハッジSONEDE総裁、原寿一駐チュニジア日本国大使、麻野篤JICAチュニジア事務所長をはじめとした多くの関係者が出席し、引渡し式が開催されました。引渡し式には多くの報道関係者が取材に訪れ、テレビや新聞のニュースでも大々的に取り上げられました。

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テープカットの模様
手前右よりモハメド・ベン・サレム農業大臣、
原寿一駐チュニジア日本国大使
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淡水化された水を試飲する原寿一駐チュニジア日本国大使と
麻野篤JICAチュニジア事務所長

 本プロジェクトでは、施設で使用する電力の一部を担う太陽光発電システムが導入されました。SONEDEはこれまでも淡水化プラントで日本製の逆浸透膜を取り入れてきたことから、塩素などの取扱いに注意を要する施設の維持管理も適切かつスムーズにスタートしました。環境にやさしい淡水化プラントでつくられた飲料水は、水不足の深刻な南部地方の約70,000人に供給され、特に夏季における長時間断水の改善や、住民の生活向上に寄与することでしょう。日本が供与した技術と施設および資機材、さらに両国が築いた信頼関係や協業体制は、今後もチュニジアで必要不可欠である淡水化事業の有効なモデルとして注目されています。

※1 逆浸透膜:水は通すが、塩類などは通さない半透膜。海水から真水を取り出す際などに使用されている。英語でReverse Osmosis Membraneということから、RO膜とも呼ばれる。逆浸透膜法は蒸発法に比べて真水を得るのに必要なエネルギー消費量が少ない。

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両国の工事関係者

プロジェクト基礎情報

案件名 南部地下水淡水化計画
交換公文署名日 2010年3月18日
供与(E/N)額 10.00億円
調達代理契約日 2011年3月23日
契約相手 水資源開発公社(SONEDE)
実施機関 水資源開発公社(SONEDE)
プロジェクト概要 逆浸透膜を使用し、塩分濃度の高い地下水を淡水化するプラント(日量1,791m3)の建設、プラントの電力消費量の約3分の1をまかなう太陽光発電システム(210kW)の設置、淡水化で排出される高濃度塩水を処理する天日乾燥ピットの建設。
JICSの役割 本プロジェクトの調達代理機関として、必要な施設・機材・サービスの調達および資金管理を含む案件全体の監理を実施する。
調達内容(品目) 淡水化プラント、淡水化プラント付帯の主要土木建造物、天日乾燥ピット(11.9ha)、太陽光発電システム