ミャンマー 教育を支え、人々の命を救う小学校兼サイクロンシェルター13校、完成

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2013年7月26日

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ミャンマー教育省第一基礎教育局で実施された引渡し式の様子。

 「教育省を代表して、日本政府と日本国民に感謝します。」

 去る2013年6月18日、ミャンマー連邦共和国(以下、ミャンマー)旧首都・ヤンゴンの教育省にて、日本の無償資金協力事業で建設された小学校兼サイクロンシェルターの引渡し式が開催されました。日本側からは在ミャンマー日本国大使館松尾秀明参事官やJICAミャンマー事務所田中雅彦所長が参加され、またミャンマー側からは教育省アウン・タン・オー副局長を始めとする約50名の関係者が参加しました。アウン・タン・オー副局長からは、「日本政府の支援により建設された建物は教室だけでなく、災害時の避難シェルターとしての機能も有しています。すでに先月サイクロンが襲来した際には、住民の避難場所として有効に活用されました。教育省を代表して日本政府と日本国民に感謝します」と感謝の言葉を述べられました。

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サイクロンの襲来後に他援助機関等により建設された仮設小学校。屋根の傷みが激しい。
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仮設小学校の中で学ぶ子どもたち。
十分な教室家具は無く、建物のつくりも簡素。
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同じく他援助機関等の支援により建てられた小学校。
外壁ははがれ、窓ガラスも割れている。

 今回、ミャンマーに建設された13校の小学校兼サイクロンシェルターは、2008年5月、大型サイクロン「ナルギス」によって壊滅的な被害を受けたボガレとラブタの両地域に建設されました。「ナルギス」襲来による死者・行方不明者は約14万人、被害総額は約40億ドルに達し、完全倒壊した小学校は約1,400校にも及びました。この被害状況を受け、日本政府はサイクロン襲来時に周辺住民が避難できる機能を有した小学校の建設を目的とした防災・災害復興支援無償の実施を決定、2009年12月にミャンマーと交換公文(E/N)、続けてJICAが贈与契約(G/A)を結びました。

 JICSは、本プロジェクトの実施機関であるミャンマー教育省第一基礎教育局(DBE1)と調達代理契約を締結し、その後ミャンマー教育省に代わって小学校兼サイクロンシェルター13校の建設会社を選定する入札を実施しました。この結果、JICSはミャンマー国内の建設会社6社と建設契約を締結し、13サイトでの学校建設が着工されました。

 施設建設が始まると、その進捗には目を見張るものがありました。プロジェクトの実施場所はミャンマー南部の広大なデルタ地域で、最寄りの都市からボートで川を下り3、4時間を要するアクセスの難しい場所が多いにも関わらず、現地の建設会社は皆とても勤勉で、予定工期に遅れることなく、むしろ予定よりも早いペースで建設工事を進めました。その工事進捗を支えるべく、JICSは施工監理のために契約した日本のコンサルタントを通じて、実施状況を把握し、問題の芽があればコンサルタントと協同して対策を講じるなど、工事の円滑な実施促進に努めました。本プロジェクトでは、デルタ地帯の軟弱な地盤に施設を建設するため、地中深くまで基礎を作る難しい工事が必要となりましたが、JICSやコンサルタントが指導し、各建設会社も手際よく工事を実施しました。また、JICSは建設会社との契約に基づき、確実かつ迅速に支払いを実施し、建設会社は支払い金をもとに、効率よく次の工事を進めることができました。そしてついに、着工から約1年が経過した2013年5月、ミャンマーにおける雨季前に全13サイトにおける建設工事が完了し、全てをミャンマー側へ引き渡しました。

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小学校建設前の敷地(Thar Yar Kone地域)
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本プロジェクトで完成した小学校兼サイクロンシェルター
(Thar Yar Kone地域)
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教室内部の様子。机や椅子も全て新調しました。
(Thar Yar Kone地域)
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Tha Pyu Gone地域に建てた小学校。地元の子どもたちはさっそく新しい校舎で学び始めています。
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完成した小学校の屋上からの景色。地元の小学生にとって、この高さからの眺めは初体験。
(Ye Kyaw Wa地域)

 今回の小学校兼サイクロンシェルターが建設されたことにより、小学生約1,800人分の教育施設が整備されるとともに、サイクロン襲来時における地域住民の避難場所が確保されることとなりました。また、この小学校はすべて二階建ての鉄筋コンクリート造りになっており、外観もとても立派なものです。それぞれの地域へ引き渡し直後から地元の小学生は、真新しい机、椅子、黒板が揃った風通しの良い明るい教室で勉強を始めました。二階建ての屋上から見渡せる遠くの景色は、平屋建て以外の建物が殆ど存在しない地域の子どもたちを驚かせ、また新しくなった教室家具で勉強できることに笑顔をほころばせていました。将来にわたって、この小学校は子どもたちの大切な学び舎であり続けることでしょう。

 また、この小学校兼サイクロンシェルターが完成したことにより、約16,000人分の避難場所が新たに確保されました。施設の引渡しが完了した2013年5月14日、新たなサイクロン「マハセン」がミャンマーに襲来しましたが、さっそくこのシェルターに近隣住人が避難し、「ナルギス」の時のような被害はありませんでした。今後も、このシェルターは地元の人々がサイクロンから身を守る場所になることでしょう。

 本プロジェクトにて建設したこの施設が、自然災害の多い日本とミャンマーの友好の証として、長きに亘って利用されるよう、期待しています。

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2013年5月、サイクロン「マハセン」襲来時に地元の人々がシェルターに避難し、難を逃れました(Hlwa Zar地域)

プロジェクト基礎情報

プロジェクト名 サイクロン「ナルギス」被災地小学校兼サイクロンシェルター建設計画
政府間決定日 2009年12月4日
贈与契約 2009年12月23日
供与額 5.81億円
調達代理契約 2011年11月28日
契約相手 ミャンマー連邦共和国教育省
プロジェクト概要 サイクロン「ナルギス」の被災地(エーヤワディ州ラブタ及びボガレ地域)において、初等教育環境を改善させると共にサイクロンの襲来時に周辺住民が避難できる機能を有した小学校を建設する
JICSの役割 本プロジェクトの調達代理機関として、入札を通じての役務(施工会社等)の調達、建設工事等にかかるプロジェクト管理、資金管理を実施
調達内容 小学校兼サイクロンシェルター13校(建設会社)