貧困農民支援(旧食糧増産援助)は、食糧不足に悩む開発途上国に対し、食用作物(米、麦、トウモロコシなど)の増産に役立つ肥料や農業機械といった農業資機材の調達に対する支援を目的として1977年に開始された無償資金協力です。
ブータンにおける農業は、GDPの約19%、労働人口の8割を占める基幹産業となっています。しかしながら、国全体が険しい山岳地帯のため、農家一戸あたりの農地も極めて規模が小さく、生産効率も悪いことから、主要食用作物の生産量は国内需要を満たしておらず、例えば米については自給率が約50%に止まっています。
このような生産性の低さを改善するため、日本政府はブータンに対し1984年から2008年度まで累計で22回の貧困農民支援(2004年度以前は食糧増産援助)を実施し、主に小規模農地の耕作に適する小型耕耘機とそれに附属するボトムプラウ及びトレーラーが調達されてきました。
今回は新たに決定した貧困農民支援で調達する耕耘機、ボトムプラウの技術仕様などを決定するためにJICSの担当者が出張に赴きました。ブータン側の意向や既に調達した機材の状況など諸条件を踏まえながら、技術仕様や検査方法、保証期間、(調達機材の操作方法・メンテナンス・安全対策などの)トレーニング内容を決めていきます。
JICSの担当者もブータン政府も、ニーズに即した製品を農民に届けたいと考えており、限られた予算の中で必要な数量を調達するため、各要素を適切に検討・設定する必要があります。
今回ブータン政府は、前回(2008年度)とほぼ同じ仕様の耕耘機を希望しており、JICSの担当者は2008年度に調達した機械を使っている農民を何人も訪ね、使い勝手や問題点をヒアリングし、このプロジェクトを担当している農業森林省の担当官と何度も話し合いを持ちました。その結果、前回の調達条件と比較し、細かな部分等について若干の変更を行うこととなりました。
このようにして決定した調達条件を覚え書きとしてまとめ、ブータン農業森林省の代表者と署名をしました。現在、一日も早く、ブータンの現状に適した耕耘機を調達するため、入札の準備を行っています。