2010年6月28日
 完成したサイクロンシェルター
 引渡し式列席者を迎える地域の子どもたち

引渡し式典には約500人の地域の人々も参加した

地元選出の国会議員A.K.M.Aアゥエル氏に各施設の鍵の引渡しを行う篠塚日本大使 |
バングラデシュは、ガンジス川、ブラフマプトラ川、メグナ川によって形成された世界最大の三角州(デルタ地帯)に位置しており、国土のほとんどが海抜9メートル以下の低地にあります。雨季には国土の2割が冠水・洪水で甚大な被害を受けることから、災害対策が国家の重要課題となっています。
2007年11月にバングラデシュ南西部を襲った過去最大級のサイクロン「シドル」は、死者3,363名、被災者約892万人という甚大な被害をもたらしました。その後の調査により、サイクロン「シドル」によって特に大きな被害を受けたポトゥアカリ、ボルグナ、ピロジプール、バゲルハットの4県では、サイクロンシェルター数が絶対的に不足しており、避難できなかった住民が多数被災したことが明らかになりました。
このような背景から、バングラデシュ政府から日本政府に対して支援の要請があり、2008年6月9日、「サイクロン『シドル』被災地域多目的サイクロンシェルター建設計画」の実施が決定されました。
これを受け、JICSは6月17日にバングラデシュ政府と調達代理契約を締結、現地にプロジェクト事務所を設置し、援助資金の管理とともに、サイクロンシェルター兼小学校建設のための調達業務(施工監理コンサルタント、建設会社の選定と契約、工事進捗監理および必要な物資の納入管理など)を実施してきました。
本計画では、上述の4県に対し36か所のサイクロンシェルターを新設しました。今回のプロジェクトサイトは首都ダッカから150キロメートル以上離れた地域であるとともに、道路アクセスが非常に困難であるため、車両、小船、バイク、人力車などを乗り継ぎ、さらには徒歩で行かなければならないサイトもありました。また建設期間中に別のサイクロンに見舞われ、工事が一時中断したこともありましたが、そういった困難な状況を乗り越え、建設を進めてきました。
今般、5か所のサイクロンシェルターの建設が終了したことから、2010年6月9日、ピロジプール県において引渡し式典が開催されました。
引渡し式典に先立ち、ピロジプール県知事や県内の小中学生数百人がピロジプール港にて篠塚日本大使をはじめ日本側の式典出席者を歓迎のアーチで出迎え、県事務所にて歓迎式典が行われました。その後の引渡し式典には、バングラデシュ側からはモンジュル・ホサイン地方政府開発省次官、A.K.M.A. アゥエル国会議員(地元選出)、アミルール・イスラーム・ブルブル日本バングラデシュ友好協会会長が、そして日本側からは篠塚日本大使が出席しました。雨季にもかかわらず絶好の晴天の中、約500人にものぼる地域住民や小学生も参加し、とてもにぎやかな式典となりました。
式典では、地方政府開発省次官より日本からの支援に対して感謝の意が表されるとともに、地域のインフラ開発を精力的に進めていきたいとの言葉が述べられました。また、日本大使からは今後もバングラデシュの開発に積極的に協力していきたいとの発言がありました。
式典の最後には、JICS独自のプロジェクト支援による記念品の贈呈を行いました。今回の記念品は、サイクロンシェルターの補完的な救命機材が必要であるとの観点から、救命胴衣、担架、警報用メガホンとし、式典にてそれらを紹介するとともに目録を手渡しました。
今回建設したシェルターは、災害時にはシェルター管轄区長の指導の下、避難・救援活動が行なわれ、約61,000人の避難が可能となります。また平常時には学校運用委員会が維持管理を行い、小学校として利用されます。

JICSから贈られた記念品(救命胴衣、担架、警報用メガホン) |

地方政府開発省モンジュル・ホサイン氏に記念品目録を手渡すJICS職員(右) |
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