2009年9月1日

ラ・デモクラシア公園の入り口。セキュリティのため警備員が配置されている

柔道の畳とボクシングリングを設置する予定の施設 |
グアテマラは1996年に政府とゲリラとの内戦が終結し、その後着実に復興・発展を遂げてきましたが、内戦で使われていた銃器が現在も数多く残っており、市民生活に大きな不安と行動の制約をもたらしていています。
このようななかグアテマラ政府は、重要政策のひとつとして「スポーツの普及・振興を通じた市民の肉体・精神面の健康向上」を掲げ、市民が安心してスポーツに接することができる場を無料で提供しています。
首都グアテマラシティにあるラ・デモクラシア国立公園もそのうちのひとつで、市民が各種スポーツを学び、楽しむための施設や器材の提供、インストラクターによる指導を行っています。年間の利用者は100万人に上り、年齢、性別、所得を問わず多くの市民が野球、サッカー、バスケットボール、柔道など各種競技を楽しんでいます。
しかし、現在使用している施設、器材の老朽化が進んでいますが、新たに購入するための資金を捻出することがたいへん困難であったため、日本に無償資金協力を要請してきました。
この要請を受け、日本政府は詳細なニーズや施設の状況などを確認するための調査を実施することとし、2008年度、JICSは同国のスポーツ普及・振興に関する文化無償調査を行いました。
調査では、公園内の各施設の状態や利用状況を調査し、適切な維持管理がなされていること、および市民によって活発に利用されていることを確認しました。また、グアテマラ文化・スポーツ省担当者やラ・デモクラシア国立公園の公園長はもちろんのこと、各競技のインストラクターや同公園を利用している多くの市民に対してもヒアリングを行い、ニーズの的確な把握につとめました。実際に公園を利用している市民の中には、休日の度に訪れている人々も多く、「この公園は私たちにとってかけがえのない場所」との声も聞かれました。また、同公園のグラウンドでは、体育施設のない学校の生徒(小学4、5年生)が、独立行政法人国際協力機構(JICA)が派遣している青年海外協力隊員(JOCV)から野球の指導を受けており、「治安が悪く外で遊べないため、この公園を利用して行われる週1回(1時間半)の体育の授業を心待ちにしている」と話してくれました。
今回の調査により、同公園の果たす役割や重要性、市民のスポーツに対する関心や公園への期待度の高さなどを確認することができました。また、国立公園側からの精神面の鍛錬に通じ、低年齢から親しむことのできる武道・格闘技の施設、器材を充実させたいという強い要望と、敷地内でもっとも立地条件の良い屋内施設に国際規格の柔道畳とボクシングリング2面を設置し、この複合武道施設での活動を公園の目玉として市民による公園の利用をさらに促進するとの計画が示されました。
このような調査結果を受け、その後2009年7月に日本とグアテマラとの間で「2009年度一般文化無償 ラ・デモクラシア国立公園スポーツ器材整備計画」の実施が決定されました。
このプロジェクトは、日本が文化無償で重点的に支援を行うこととしている「武道など日本の伝統的文化に関連する協力」に該当するものであり、また、柔道とボクシングの組み合わせというユニークな協力としてJICAや国際交流基金などからその成果が注目されています。
本件協力の実施(器材の設置)後は、JICAやJOCVとの連携のもと、JOCV柔道隊員の派遣も検討されています。 |