大西洋に浮かぶ、火山性の15の島から構成されるカーボヴェルデは、乾燥気候により、年間降水量が少なく、飲料水の確保が最重要課題となっています。カーボヴェルデ政府は、地下水開発、地表水貯留および海水淡水化を3つの柱として水資源開発を進めています。なかでも、地下水開発については日本が実施した調査結果に基づき、日本を含めたドナー(援助国)がプロジェクトを推進してきましたが、カーボヴェルデ政府の財政難やコレラの発生などにより、当初の目標を達成できていない状況です。
このため、同国政府の要請の下、日本政府は給水分野に対する支援を2004〜2006年に行い、その後、同支援を補完する「サンティアゴ島地下水開発・給水計画」の実施を2009年3月27日に決定しました。このプロジェクトは首都プライアのあるサンティアゴ島の山岳地帯26村落を対象として、井戸の掘削や、地下水を利用した給水施設の建設・修復、ポンプや発電機などの関連機材を供与するものです。
JICSは、カーボヴェルデ政府の調達代理機関として、施設建設のために必要となる設計・施工監理コンサルタント、施工会社の選定、案件実施監理、プロジェクト資金の管理を主な業務として行ってきました。
本プロジェクトの実施により、対象地域の約1万7,000人に安全な飲料水が安定して供給されることになります。また、きれいな水の供給により、コレラなどの水因性疾病の発生やそれによる乳幼児の高い死亡率も軽減されるとともに、就学期の児童や女性が過酷な水汲みの労働から解放され、就学・就職の機会が増大し、貧困からの脱却に寄与することが期待されています。
このたび、すべての給水設備が完成し、2012年1月19日、サンチャゴ島の対象村落のうち、最北に位置するクーラル・ヴェッリョにて、カーボヴェルデのNeves首相や在カーボヴェルデ深田大使(セネガルにて兼轄)を主賓とした本プロジェクトの引渡し式が行われました。
晴天に恵まれた当日、環境大臣をはじめとするカーボヴェルデ政府要人、サンティアゴ島9郡の代表、給水設備設置に関わった井戸掘削業者や施工業者、プロジェクトの裨益者となる周辺住民、日本側関係者など約100人立会いの下、給水塔の除幕式が行われました。カーボヴェルデ側からは、島国であり、山がちな地形等のため給水率が低い地方村落におけるプロジェクトの必要性と日本国への感謝が表され、これに対し深田大使からはプロジェクトが両国の友好の証であるとの言葉が返されました。また、給水塔が設置されるまでは、霧の水を網によって収集するしか取水手段がなかった地元住民からの感謝の踊りや歌が披露されました。
担当者からのメッセージ
両国間で実施が決定してから約3年を経て完成を見たプロジェクトに、調達代理機関として関われたことを嬉しく思います。引渡し式では、現地に駐在して粘り強く監督業務を行なってきた日本人コンサルタント、実際の工事に携わった現地建築会社の社員たちが、お互いの苦労をねぎらい合って喜んでいる姿に、国際協力という言葉が体現されていました。
引渡し式の模様(2012.1.19)