2009年6月19日
2008年8月28日に行われた起工式。教育大臣Dr. Mamphono KhaketlaとJICA南アフリカ共和国事務所吉村次長(マフェテン県マソレング)
起工式で踊りを披露する子どもたち
工事が進んでいるモコトロングの建設現場。山岳地は現場へのアクセスが悪いためヘリコプターを利用することもある(2009年3月23日、モコトロング県シープスタッド)
教室棟の建設工事は大詰めを迎えている(2009年5月20日、ブータブーテ県ベロ) |
レソト王国は、国土の周囲を南アフリカ共和国に囲まれた内陸国で、人口約200万人(2007年世界銀行調査時点)が暮らしています。全土の標高が1,500メートル以上あり、高い山脈が多いことから「山の王国」(Mountain Kingdom)や、「天空の王国」(Kingdom in the Sky)と呼ばれています。 国土面積は日本の九州よりやや小さく、日本と同様に四季があります。2006年にレソトの鉱山から世界で15番目に大きいという603カラットのダイヤモンドが採取されたことが話題となりました。
しかし、レソトは国連開発計画(UNDP)が発表する人間開発指数(HDI)(2008)では、179か国中155位に位置する後開発途上国(LDC)のひとつとされています。主要な産業は農業、繊維産業ですが、農業は耕地面積が国土の10.5%と少なく、また干ばつ等による慢性的な食糧不足で伸び悩み、繊維業は2008年の金融危機以降の世界的な不況の影響を受け、状況は急速に悪化しています。近年では南アフリカ共和国の鉱山への出稼ぎ労働者の収入がレソト経済の重要な位置を占めています。他方、エイズ罹患率が非常に高く、社会発展に影を落としています。
教育分野においては、“Education for All”(すべての人に教育を)の目標を2015年までに達成するため「初等教育無償化プログラム(Free Primary Education Program: FPE)を推進しています。現在、中等教育の状況は就学率25.4%と依然低水準にありますが、初等教育無償化政策により、今後中等教育の就学率の大幅な増加と教室の大幅な不足が予測されています。このためレソト政府は新規の教室の増築や、既存の小学校の教室を一部中等学校として代用するなどしていますが、厳しい財政事情から十分な中等教育の教室数を整備することが困難な状況にあります。
こうした状況のなかで、2008年3月7日、日本政府とレソト政府との間でコミュニティ開発支援無償資金協力「中等学校建設計画」が決定されました。これを受け、同年4月7日、JICSはレソト政府と調達代理契約を締結し、レソト政府に代わり中等学校建設のための調達業務(援助資金の管理、施工業者や家具納入業者等の必要となるサービスと物資の入札手続きと調達、工事進捗監理および学校家具の納入管理等)を行うことになりました。2009年6月現在、学校建設工事が進行しています。
本計画では、2015年には中等教育の不足教室が3,622教室となると予測されている教育施設の不足状況を改善し、中等教育環境の改善と中等教育へのアクセスの向上を図ることを目的に、優先度の高い7県に各1校の中等学校を建設しています。各校には6教室、理科・ICT実験室、および管理諸室(校長室、職員室、倉庫)の建設、便所、給水施設を、さらに生徒の通学範囲が広い地方山岳地域と需要が高い首都では学生寮や多目的ホールが併設されます。
これらの校舎の整備により1,680人に対して中等教育の就学機会が与えられることになります。また、入札によって発生した残余資金を使用して各校に4教室棟増築することが計画されており、最終的には2,800人の生徒の学習環境が整備・創出される見込みです。
冬には山間部で雪が積もるような厳しい気候や、アフリカならではの予期せぬことが起こるなど多々ありますが、地域住民や相手政府の期待は大きく、子どもたちは学校の完成を待ちわびています。子どもたちが早く新しい教室で勉強できるよう、JICSスタッフは日々建設現場を飛び回って施工監理を行っています。
完成に近づく教室棟の建設(2009年5月20日、レリベ県ピッツォグラウンド) |
日本政府の援助であることを示す工事看板が設置されている(首都マセル市マソエ) |
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