ネパールでは、初等教育全般の就学率は改善傾向にあるものの、進級率や修了率は未だ低い水準にとどまっています。ネパール政府は、5歳から12歳までの児童が等しく初等教育を受けられるよう、2015年までの初等教育の完全普及を目指し、また、今後初等教育と合わせて中等教育も拡充させていく必要があることから、2009年より基礎教育改革プログラムを実施しています。日本政府は、ネパール政府より、本改革プログラムへの支援要請を受け、平成24年2月、「基礎教育改革プログラム支援のための学校改善計画」の実施を決定しました。
本プロジェクトでは、教室あたりの生徒数が多く、かつ建設ニーズが高い国内8郡を対象に、基礎教育用教室350棟(1棟あたり2教室で合計700教室)を建設するための資材及び机や椅子などの教室家具を調達し、ネパール側に納入します。
教室建設のための資機材や家具が各対象郡で納入されたのち、今度は地域住民から成る学校運営委員会及び学校が郡教育局の支援を受けて教室を建設することとしています。計画通り700教室が建設されることにより、約3万5千人の子どもの受け入れが可能になります。また、教室整備に併せ、(1)郡レベル教育関係者の学校運営支援能力の強化、(2)対象校における子どもにやさしい学習環境の整備、(3)対象校における学校運営能力強化、(4)対象校の教師の能力強化などを目的とした技術支援業務も実施します。
JICSは、ネパール政府の調達代理機関として、学校建設に必要な機材と技術支援の役務の調達、及び援助資金管理を含むプロジェクト監理を担当しており、その一環として平成24年5月8日、今後約3年にわたり上記(1)〜(4)の技術支援業務を委託するセーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(Save the Children Japan, 以下SCJ)との契約署名式をJICS本部にて行いました。
SCJは、学校運営委員会に対し、住民動員、学校改善計画策定といった活動を通して強化支援を行うほか、 子どもにやさしい教育を実現するために対象校の教員研修、子どもによる課外活動を活性化するための子どもクラブ設立といった活動も実施します。ネパールにおける基礎教育の課題のひとつとして、低学年の子どもがせっかく小学校に入学しても1年生もしくは2年生から上級に進級できない割合が高く、落第するもしくは退学(ドロップ・アウト)する子どもが多数存在する問題があります。この背景には、教員が子どもの発達状況に応じて適切に教える技量を十分に備えていないこと、家庭の言語と学校の教育言語が異なることなど様々な要因が考えられます。そのため、本プロジェクトでは、ネパール側による教室建設のための資材や教室家具の調達を通してより適切な教育環境を提供することを目指すことに加え、整備された環境でより子どもが学習しやすいソフトの環境を創出することを目的としています。
コミュニティ開発支援無償の案件において、学校建設と同時に教育関係者に対してNGOにより技術支援が行われることは今回が初めてのことです。
お互い国際協力に関わる団体ですので、共通の話題も多く、特定地域(アフガニスタン、ミャンマー等)における事業や団体運営など、大いに会話が盛り上がりました。
本プロジェクトの実施により、教室内の過密度が緩和され、子どもが快適に学習できる環境が整備されること、また、郡の教育関係者や教員の学校改善・学校運営や教授法に関する能力の向上が期待されています。