2010年7月28日
山道を通学する生徒
教室が足りないため廊下で授業を受ける生徒たち
旧校舎で勉強する生徒たち |
ニカラグアは、約10年におよぶ激しい内戦の末、1988年の暫定停戦合意に達して以降、経済復興に取り組んでいますが、現在も厳しい経済状況が続いています。同国政府は、2003年に国家開発計画を策定し、教育を社会経済開発のための重要課題と位置づけ、初等教育就学率向上に向けた教室の整備を行っていますが、依然として教室数は不足している状態です。
特に、北部地域5県(マタガルパ県、ヒノテガ県、エステリ県、マドリス県、ヌエバ・セゴビア県)では、教室が少ないために簡素な小屋や間借りした民家、教会などで授業が行われている場合もあり、これら5県では退学や留年をする生徒の割合が全国平均よりも高いことがわかっています。
こうした状況のもと、ニカラグア政府からの要請を受け、2008年8月、北部5県に対して合計26の学校(211教室)の建設を行うためのコミュニティ開発支援無償「北部地域教育施設改修及び機材整備計画」の実施が決定されました。
JICSはこのプロジェクトに関して、2008年9月にニカラグア国教育省と調達代理契約を締結し、首都マナグアにプロジェクトオフィスを設置後、プロジェクト資金の管理をはじめ、小中学校教室棟やトイレなどの施設建設、机や椅子など学習用家具類、調達手続きおよび施設建設にかかる施工監理など、プロジェクト全体のマネジメントを行っています。
施工会社の調達契約手続きを経て、2009年11月に本プロジェクトにおける学校建設現場のひとつ、ヒノテガ県のベンハミン・セレドン学校で行われた起工式には、ニカラグア側からは教育大臣、北部ニカラグアの対象地域の市長、地域住民委員会、学校の生徒やPTAが、日本側からは斉藤在ニカラグア特命全権大使、JICA関係者、JICS職員が出席しました。
生徒によるヒノテガ県の伝統的な舞踏やマーチングバンドなどの演奏も行われ、にぎやかな式典となりました。また、この式典には多数の報道機関が取材に訪れ、現地テレビやラジオ、新聞などで大きく報道されるなど、地域全体で本プロジェクトを歓迎する雰囲気のなか、当地での学校建設が始まりました。
その後、上記学校建設現場を含む計26か所に渡る広範囲な現場で、順次、建設工事が進められています。
コミュニティ開発支援無償は、現地仕様・設計の導入や、現地事業者・資機材の積極的な活用によってコストを縮減できる利点がありますが、一方で工程管理や品質の確保にさまざまな配慮が必要となります。当初、ニカラグアの現地施工会社は、日本側が求める施工技術水準を満たすことができずにいましたが、施工会社、コンサルタント、JICSスタッフの間でねばり強く協議を繰り返した結果、両国側が納得のいく施工水準を確保することができるようになりました。
2010年7月現在、一部の校舎の完成が近づきつつあります。山間部にあるマタガルパ県のレスビア・ロペス学校では、JICSスタッフが完成前の検査を実施しました。検査では、建築物や机・椅子などが設計図通りであるかなど、細部に渡り状況を確認しました。
JICSは、引き続き、本プロジェクトの完了を目指し、実施をサポートしていきます。
握手を交わす教育大臣と大使 |
生徒によるニカラグア舞踏 |
レスビア・ロペス学校完工前の検査の様子 |
机・椅子などの納品が完了した教室 |
|