2008年12月16日
ニジェール共和国は、サハラ砂漠の南に位置する内陸国です。主要な産業は農牧業とウラン産業ですが、累積債務の増大や天候不良などによる農産物の生産量の落ち込みなどを受けて、経済状態が低迷しています。国連開発計画(UNDP)が2007年に発表した、寿命、識字率と就学率、所得などから多角的に生活充足度を測る人間開発指数(HDI)では、177か国中174位に位置し、世界でも貧しい国のひとつに数えられています。
ニジェール共和国政府は教育を重要な開発課題のひとつと捉えており、「教育開発10カ年計画(2003-2013)」を策定し、その中で就学率を70%にあげることを目標に掲げています。しかし、農村部では依然として就学率が36.8%と低水準にとどまっています。今回のプロジェクトの対象地域であるマラディ州とザンデール州は、首都ニアメに次ぐ人口の多い地域です。現在も急速な人口増加(年3.2%)が進んでおり、就学児童数が増え続けているにもかかわらず、財政的な問題などにより必要な数の小学校建設は困難でした。
このような状況を受けて日本政府は、ニジェール国政府の要請により、2007年2月に小学校教室建設計画の実施のためのコミュニティ開発支援無償を決定しました。
JICSは2007年3月にニジェール共和国国家教育省と調達代理業務契約を締結し、同国政府の代理人として、本プロジェクトの実施に必要となる役務・機材の調達やプロジェクトの進捗管理などを行っています。さまざまな手続きを経て、2008年12月現在、ザンデール州で現地施工業者による工事が進行中です。
コミュニティ開発支援無償では、現地仕様に基づく設計の採用と、現地のコンサルタントや施工業者などを活用する点が大きな特徴で、今までにはなかった新しい援助方式として注目を集めています。雇用を通じた地域経済の振興・人材の育成や技術レベルの向上につながることも期待される一方、現地のコンサルタントや施工業者などの活用に際しては、適切な品質と工期を確保するためのさまざまな工夫と努力が必要となり、高度な調達監理(案件監理)能力が求められます。
本プロジェクトでは70校にのぼる小学校の建設と建替え、トイレ棟の建設、教室備品の整備を予定しており、2万6,600人の児童の学習環境が改善されることが期待されています。また、学校建設とあわせて、現地で活動を行うNGOと連携し、ソフトコンポーネントとして、建設した学校施設の持続的な維持管理方法と、トイレの使用に関する衛生教育を現地の児童に対して行う予定です。
新しい援助方式ならではの苦心はありますが、地域住民や学校関係者の期待は大きく、これらに応えるためJICSスタッフは奮闘しています。
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