日本政府が提唱している「平和と繁栄の回廊」構想の一環として、ヨルダン川西岸のラマッラにおいてコミュニティ開発支援無償「ヨルダン川西岸地区学校建設計画」が実施されています。このプロジェクトの当初計画に沿って建設を進めてきた5校の学校が完成し、2011年1月から2月にかけて、順次パレスチナに引き渡されています。
「ヨルダン川西岸地区学校建設計画」は、初等・中等教育の就学者数の急増に対して学校が不足しているヨルダン川西岸地域において新たな学校を建設するものです。この案件に関してJICSは、パレスチナ教育庁の調達代理機関として、ラマッラにプロジェクトオフィスを設置のうえ、施設建設のために必要となる設計・施工監理コンサルタント、建設会社、学校家具などの納入会社の選定、現場レベルでの案件管理、プロジェクト資金の管理などの業務を行っています。
2011年2月21日、パレスチナ教育庁のファワーズ・ムジャへッド施設局長、同庁の技術責任者であるファカリ・サファディ氏、教育庁ジェリコ局長ムハンマド・アル・ハワッシ氏や技術者ら、施工監理コンサルタント、および案件の実施監理を担当したJICSが参加し、本プロジェクトにおいて5校目に完成を迎えたジェリコ市の男子中等学校の完工検査を実施しました。
完工検査は、工事が完了した施設を相手国政府に引渡す前の段階で、当該建築物が要求された品質を満たしているか、技術的な問題はないかを確認するために行う非常に重要な検査です。プロジェクト関係者が参加し、それぞれが様々な視点から細かい部分まで1つずつ確認を行います。
完工検査にて問題がないことが確認された後、学校をパレスチナ教育庁に引渡しました。ジェリコ市は海抜約マイナス200mに位置しており、昨年の夏には気温が50度を超える猛暑日が続き過酷な作業環境となったこともあり、作業員の確保にすら苦労する状況でしたが、当初より予定されていた5校を無事完工することができ関係者の感動もひとしおでした。
完工検査では、本案件の責任者でもあるムジャへッド局長が、今回の学校建設プロジェクトは教育環境の改善を目標とした教育省の計画に合致するものであり、学校教育の二部制や過密授業を解消するための解決策となるであろうと述べ、改めて日本政府の支援に対する謝意を示しました。
また、ハワッシ氏からは、今回の学校の完成を歓迎するとともに、日本政府のヨルダン川西岸地域やジェリコ市に対する関心の高さに対して謝意を表したうえで、引渡しに立ち会った人々に対し、この新しい学校には16の教室以外に科学実験室も併設されていることなどを紹介しました。
この引渡しの様子は、翌日、現地の新聞でも報道され、日本の支援をパレスチナの人々に知ってもらう良い機会となりました。
今回の学校5校(69教室)の完成により、同地域の約2,600人の生徒が授業を受けることができるようになります。本プロジェクトでは現在、余った予算を活用して更に2校の施工を行っています。JICSは、引き続き本プロジェクトの円滑な実施を目指し、サポートを続けていきます。