広大な森林地帯が広がるコンゴ盆地は、「地球の片肺(もう一方の肺はアマゾン川流域)」と称されるほど二酸化炭素の吸収や酸素の供給にとって重要な役割を果たしています。ガボンはそのコンゴ盆地に属し、国土の80%以上が森林に覆われていますが、現在、ガボン政府は国際的気候変動対策の枠組みの中で検討が進められているREDDプラス※1への参画や森林管理の適切化を目標として、全国森林インベントリ※2の実施を計画しています。この取り組みにより、森林の現況が明らかとなり、REDDプラスの参画に必要な基礎データが整備される見通しです。日本政府はアフリカ諸国の環境気候変動分野の取り組みに対する支援を表明しており、この一環として2010年3月にガボンの取り組みを支援する「森林保全計画」の実施を決定しました。
本案件について、JICSはガボン政府(水森林省)と2010年7月に調達代理契約を交わし、水森林省の代理機関として全国森林インベントリに必要な機材を調達したほか、調達機材の基本的な使用方法の指導をソフトコンポーネント(技術支援)として行いました。この研修は(1)リモートセンシング※3、(2)GIS※4、(3)森林調査の3つのコンポーネントから成り、2012年5月〜7月にかけて、それぞれ約1ヵ月間実施され、関係機関(水森林省、水森林学校、経済・雇用持続的発展省、国立公園庁)から延べ53人が参加しました。日本人専門家を中心とした指導の下、衛星画像、リモートセンシング及びGISソフトウェア、GPSなどの調達した機材を用いて、森林分布図の作成、森林資源データベースの作成、模擬的なインベントリなどが行われました。研修開始時は参加者の多くが機材に触れたことさえありませんでしたが、終了時には全員が基本的な使用方法を習得し、修了証が授与されました。全研修修了後には成果発表会が開催され、ガブリエル・ンチャンゴ水森林大臣、在ガボン小林正雄大使、山形茂生JICAガボン支所長他62人の参加者を前に、各コンポーネントの研修修了生がパワーポイントを用いて研修内容、成果、今後の活用・抱負を発表しました。現地メディアも多数取材に訪れ、ソフトコンポーネントは成功裏に終わりました。
また本案件を引き継ぎ、2012年8月末から3年間の予定で、JICAの開発調査型技術協力によるステップアップ研修などが実施されます。2つのプロジェクトの連携により、我が国からの機材と技術の更なる活用・醸成が図られ、ガボンの全国森林インベントリシステムの強化、適切な森林管理に貢献することが期待されています。
※1:Reduced Emissions from Deforestation and forest Degradation plusの略(途上国の森林減少・劣化による温室効果ガスの排出量削減)。国連気候変動枠組条約(UNFCC)締結国会議(COP)で議論されている温暖化防止メカニズム。
※2:地上調査や衛星画像解析調査などの手法により、全国の森林資源を推計する調査。
※3:対象を遠隔から測定する手段であり、その定義は幅広いが、ここでは人工衛星や航空機などから地球表面付近を観測する技術を指す。
※4:Geographic Information System(地理情報システム)の略。作成・保存・利用・管理し、地理情報を参照できるように表示・検索機能をもったシステム。