ケニア西部ニャンザ州のニャンド川流域では、毎年雨季になると気候変動に起因するとみられる大規模な洪水が発生し、地域の経済成長や貧困削減を妨げる大きな要因となっています。そのため日本政府はケニア政府の要請に基づき、環境プログラム無償による支援「気候変動への適応のためのニャンド川流域コミュニティ洪水対策計画」を実施しています。これは、ニャンド県とキスム県の24村において、各村のニーズに応じて井戸、避難所、カルバート(道路下を横切る排水溝)、人道橋、堰などの洪水対策施設の建設を行うプロジェクトです。また、これら施設の建設とあわせて、地域の洪水管理組合の設立、洪水管理訓練、防災教育、ポスターやラジオ放送による啓発活動も行う予定です。
JICSはケニア水灌漑省との調達代理契約に基づき、援助資金の管理、プロジェクト全体のマネジメント、およびこのプロジェクトで必要となるサービスの調達を行っています。施設整備を行う会社の選定が終了し、いよいよ工事が始まる段階となったことから、2010年5月27日、アヘロ多目的センターにおいて起工式が行われました。
式には、ケニア側からは水資源管理庁、水灌漑省関係者をはじめ地域・村落の代表者が、日本側からは独立行政法人国際協力機構(JICA)ケニア事務所担当次長、JICS職員を含むプロジェクト実施関係者が出席しました。ケニア側水灌漑省の給水局長ニャオロ氏からはそのスピーチの中で、日本の協力に対して感謝の言葉が述べられました。
また、式典では、本プロジェクトのコンサルタント業務を担当する関係者から、日本の「KAIZEN」について紹介されました。「KAIZEN」とは、日本の製造業における重要な理念のひとつで、上からの指示によってではなく、現場の作業者が中心となって作業効率の向上や安全性の確保などのための活動を行うことを意味します。
本プロジェクトの実施における関係者の取り組みにこの理念を取り入れるのみにとどまらず、洪水対策施設の完成後もその維持管理や保守点検などを地域の人々が積極的に「KAIZEN」しながら行っていくことの必要性が述べられました。
その後、会場を外に移し、テープカット、鍬入れ式、そして大豆の種まき、バナナの植樹が行われました。
バナナは、現地の人々にとってなじみのある植物であることに加え、地中深くまで根をはるため、洪水が発生した場合でも水に流されにくく土壌の流出防止に役立ちます。また、株分けして植えると容易に増やすことができ多くの収穫が見込めることから、洪水発生時の緊急的な食糧としても期待されています。
2010年7月には建設が計画されている76の施設のうち、井戸3基、人道橋1基、カルバート11基の建設を終える予定です。
頻発する洪水の被害が減少し地域の人々が安全に生活できるよう、JICSは調達代理業務を通じてこのプロジェクトをサポートしていきます。