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「SARSとの戦い」の現場を訪ねて
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 〜「雪中送炭」の対中緊急援助〜
中華人民共和国緊急無償(平成15年度)
 「私たちがSARSと戦っている重要な時期に、日本国民は私たちの戦いに関心を寄せていただいた。中国に「雪中送炭」*という故事があるが、本当に必要な機材を困難な状況の中で援助いただき、支援してくれた日本政府はもとより、日本国民全体に対し、中国人民が感謝していることをぜひ伝えていただきたい。」
 2004年10月に、二年連続してSARS患者が発生した中国・安徽省をJICS第2次モニタリング調査団が訪問した際、安徽省衛生庁の幹部からこのように深甚な謝意が述べられました。

 JICSは、2003年春に猛威を振るい世界を震撼させたSARSに対し、日本政府が実施した緊急無償援助の調達監理機関として、実際に現場で使用される医療機材や防護服などの調達を担当しました。今回、緊急調達から1年余りが経過し、その後現地で医療機材等がどのように活用されているか、何か問題が発生していないかを確認するため、JICSは2003年10月の第1次モニタリング調査に引き続き、2004年10月、第2次モニタリング調査団を安徽省と広西壮族自治区に自主的に派遣し、「SARSとの戦い」の最前線となった病院等の状況を確認しました。

 日本政府は2003年5月9日、対中SARS対策支援として約15億円という大規模な緊急無償援助を発表しました。5月16日に緊急無償援助に関する口上書が政府間で交換され、これを踏まえ同日、中国政府とJICSの間で調達監理契約が締結されました。JICSは世界的にSARS関連物資の供給がタイトとなっている状況の中、迅速に調達作業を進め、調達品目は移動式X線装置、ICU(集中治療室)モニターセット、簡易人工呼吸器セット、防護服などの15品目に及びました。これらの機材の第1陣は13日後の5月29日に北京に到着しました。
 同年5月31日、サンクトペテルブルク建都300年記念行事に出席した小泉首相は胡錦濤国家主席と日中首脳会談を行いましたが、この席で、冒頭胡錦濤主席から「中国人民および政府を代表し、SARSに関する日本からの支援に心から感謝」の意が表されました。
 
*「雪中送炭」
他人が困り果てている時に物心両面の援助を与えること。急場を救う、その人がなにより欲しているものをしてあげることがその人に対する好意であるというたとえ。「錦上添花」と対比して、賑やかで楽しい場にさらに花を添えるより、雪に見舞われ苦しい時に炭を送る方が喜ばれることを表す。
(写真)除細動器
安徽省六安市中医院に配置された除細動器
(写真)薬剤噴霧器
安徽省合肥市衛生局に配置された薬剤噴霧器
(写真)血球カウンター
安徽省省立医院に配置された血球カウンター
 安徽省においては、2003年のSARS患者数は10名で終息しましたが、SARSの再流行を防止するため、省内38ヶ所の医療機関に対し、日本からの緊急無償援助の医療機材が設置され、発熱患者の診断、患者発生の場合の治療、医療従事者の感染防護、感染地区の消毒等に備えました。省衛生庁・民政庁は連名で特別の通達を発出し、援助物資の使用状況の報告を義務付けるとともに、管理の明確化を求めました。省衛生庁の調査によれば、援助物資の95%は実際に使用中であり、5%はSARS発生時の緊急用として倉庫に保管されているとのことでした。

 2004年4月、SARSの恐怖が再び安徽省を襲いました。北京の中国疾病予防抑制センターで研修を受けていた安徽省医科大学の研究生が感染し、その母親が感染して死亡したのです。この際、省疾病予防抑制センターに日本の援助物資として配置されていた200着の防護服は全て使用され、 隔離区内の消毒のため薬剤噴霧器が大いに活用されたとのことです。
 調査団は可能な限り多くの現場を訪問し、機材の現況を視察した上で使用状況を関係者から聴取しましたが、活用状況、メンテナンス状況も非常に良好であることが確認できました。
(写真)ICU (写真)紫外線殺菌灯 (写真)医療関係者
安徽省合肥市児童医院に配置されたICU(集中治療室)モニターセットと輸液ポンプ 安徽省合肥市児童医院に配置された紫外線殺菌灯 安徽省立医院で活躍する移動式X線装置と担当の医療関係者
プロジェクト情報
プロジェクト名
中華人民共和国緊急無償(平成15年度)
政府間決定日
2003年5月16日
供与(EN)額
15億円
納入日
2003年5月29日〜2003年8月9日
プロジェクト内容
SARS対策用に必要な医療資機材の緊急調達及び北京までの空送
JICSの役割
本プロジェクトの調達監理機関として、一連の機材調達業務および資金管理を実施
調達品目
移動式X線装置、薬剤噴霧器など全15アイテム

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