パキスタン北西部のアフガニスタンとの国境沿いには、連邦直轄部族地域(FATA:The Federally Administered Tribal Area)が広がっています。この地域は、さまざまな部族の居住地域として広範な自治権が認められていますが、この部族社会という特殊性から同国政府の社会開発と貧困削減への取り組みが遅れています。貧困削減は、テロなどの不安定要因を取り除くための重要な課題であると考えられていることから、同地域への貧困削減に向けた取り組みが強く求められていました。
このような状況を受け、2008年1月、日本政府とパキスタン政府との間で、ノン・プロジェクト無償資金協力による、FATA地域の医療および学校教育の環境改善を目的とした支援が決定されました。このプロジェクトは、医療分野への支援として救急車、医療機器、発電機を、学校教育分野への支援として机や椅子などを調達するものです。
このプロジェクトに関して、JICSは2008年3月にパキスタン国経済統計省と調達代理契約を締結し、機材の納入業者の選定、納入監理および資金管理などの業務を行っています。
2009年12月7日、本プロジェクトの第一弾として救急車15台がペシャワールのFATA事務局に到着しました。この模様は現地新聞でも全国的に報道され、日本の援助に対する期待と関心の高さがうかがわれました。また、今回の到着とあわせ、これらの救急車が配置される予定の各病院の担当者に対して、使用方法や維持管理方法に関するトレーニングも実施されました。
FATA地域は他地域のパキスタン人や外国人が立ち入ることが困難な地域であるため、FATA事務局に協力を要請し安全確保に努めながら他の医療機器や学校家具等についても納入を進めています。
本プロジェクトによりFATA地域における医療・教育環境の整備が図られ、地域の人々の生活が向上、安定することが期待されています。