2008年7月16日

倉庫に納品された蚊帳。一包みあたり40張入っている

蚊帳の検品作業 |
モザンビークでは、1歳未満の乳幼児死亡率が1000人当たり104人、5歳未満児死亡率が1000人当たり152人とたいへん高い値を示しており、その主な原因となっているのがマラリアです。
マラリアはハマダラカという蚊が媒体となり人に感染します。マラリアを予防するためにはいくつかの方法がありますが、なかでも殺虫成分が長期にわたり徐々に滲み出るよう開発された「長期残効型蚊帳」を普及させることが比較的低コストでありながら効果が高い方法とされています。特に妊婦がこの蚊帳を使うことで、低体重児の出産や流産、死産を防ぐことができます。さらに子どもが生まれたあとも蚊帳を使い続けることで、母子を引き続きマラリアから守ることも可能です。
そこでモザンビーク政府から日本政府に対して、妊産婦に無料配布するための長期残効型蚊帳の支援が要請されました。JICSは、調達監理機関として現地調査の段階からこの案件に関わり、調査報告書の作成、入札、納品後の検査まで一貫した業務を行ってきました。
当初、モザンビーク保健省は日本側が中央の倉庫に蚊帳を納品した後、各州や県にある保健所に蚊帳を配布する計画をたてていました。しかし、拠点となる中央及び各州や県の倉庫を視察したところ、とても大量の蚊帳を保管する余裕はないうえに、中央から各県や州へ輸送する車両の配備も十分とはいえない状況でした。日本の無償資金協力では被援助国内での保管や運搬は相手国負担が原則です。そのため、JICSが蚊帳を調達しても最終的に蚊帳を必要としている人たちに送り届けることは困難かと思われました。
そこで、様々な関係者と協議や交渉を重ねた結果、現地で活動しているNGOの協力を得て5つの州に蚊帳を配布する方法が考え出されました。日本政府が蚊帳を納品した後に、NGOが英国国際開発庁(DFID)の資金援助を受けて拠点となる倉庫の確保と各県までの輸送、保健従事者への訓練、使用状況のモニタリングなどの後方支援を実施することになったのです。
本件により、妊産婦と生まれてくる子どもをあわせたおよそ100万人以上がマラリアから守られることになり、マラリア罹患率および死亡率の低下に資することが期待されています。
現場では思いがけない事態にも柔軟に対応することが求められます。JICSは今後も様々な経験を生かしてサポートしていきます。 |