2008年10月30日
カンボジアには、20年におよぶ内戦によって埋められた地雷が今でも数多く残っており、それらを除去するため1992年に設立されたカンボジア地雷除去センター(CMAC)が積極的な活動を行っています。
これまで地雷除去活動は手作業で行われてきたため、作業員が危険にさらされる場面が多いうえに、膨大な時間と労力が必要となっていました。そのため、日本政府は地雷除去作業の機械化に向け、2006年に第一次研究支援無償として地雷除去機及び探知機の基本性能試験を現地で実施、第二次として2008年から地雷除去機3台を実際の地雷原に投入、運用試験を実施しており、JICSはこれらの案件の案件監理を担当しています。
現在実施中の第二次研究支援無償では、現場の状況に応じて地雷除去機と除去員の手作業を組み合わせて除去活動を実施しており、その結果、地雷除去機と除去員は安全に活動を行い、開始後6か月間で地雷汚染地域の200ヘクタール※を地雷のない安全な土地とすることができました。(※1ヘクタールは1辺の長さが100メートル四方の面積)
本プロジェクトでは、地雷除去機の運用試験を行いながら地雷原の削減を目的としていたところ、予想以上の効率で除去活動が進みました。
2008年9月現在、地雷除去機による除去跡地ではすでにいくつもの区域で稲やトウモロコシの栽培を中心とした農耕が始まっています。現地の住民からは「これまで入れなかった場所を農地にすることができ、感謝している」「小作人や日雇いの雑役夫として働いていたけれどようやく自分の農地を持てた」などの言葉が届いています。土地が安全になったことで、遠方での出稼ぎから戻ってきた住民もいました。地雷除去完了後の跡地の農地化促進のための試みとして、小規模な農民支援事業にも着手しています。
今年7月からトウモロコシ栽培を始めたサオルーさん。北部タイ国境近くで働いていたが、地雷が除去されたと聞き帰村した。
耕運機の借料、種、肥料などの初期投資のためおよそ1,000ドルの融資をNGOから受け自活している。 |
機械での地雷除去活動の跡地で炭焼き用の倒木を集めているニュンさん。この場所は義父の土地。彼自身は後方に見える炭焼き釜の右裏手で稲作を始めている。以前は地雷が怖くてこの辺りには近寄れなかったという。地雷原の外に小さな畑を持つが、新たな農地により生活の向上が期待される。 |
本プロジェクト担当者からの現場報告
去る2007年1月、カンボジアでの地雷除去活動中、女性を含む地雷除去員7名の尊い人命が一瞬にして失われる事故があった。事故は、JICSが地雷除去機試験を実施していた近郊で発生した。大小の地雷が一瞬にして誘爆し、大爆発を起こしたと推察されている。この痛ましい事故に対し、JICSをはじめ国際関係機関からの弔電がカンボジア側へ寄せられた。
事故直後、「機械による地雷除去を先行させていれば事故は軽減できた」との言葉を現場サイドから聞いた。
〈過去の日本の援助と研究支援無償〉
日本政府は、人道的地雷除去活動支援の見地から多くの無償資金協力等を行っている。それら支援の効果により、カンボジアでの地雷被災者は年々減少傾向となり、2005年は900名であったが2007年には約400名と半減している。
安全で迅速な地雷除去活動は、同国のニーズであり、国際的な地雷廃絶キャンペーンにも合致する。
日本政府の資金により現在行われている第二次研究支援無償においては、機械と人的資源との融合を念頭に、機械に不向きな泥濘や水源地、急斜面、森林、露岩地帯などは人力で行う一方、平坦な潅木地は機械での除去を行うなど、現場状況に応じ作業形態を変えて除去試験を実施している。
その結果、開始後6か月間で除去面積が200ヘクタールに達するという、驚異的なスピードで地雷除去活動が進行中である。
さらに、機械導入によって地雷除去員の安全確保が図られたことはもとより、除去員の再教育、機材維持管理要員養成、機械オペレーターの技術向上などの成果が認められた。
〈現地の末端の人々の生活を支える必要な支援〉
好調なカンボジア経済を支えるものは、農業を中心とした第一次産業であり、近年、農地転用のニーズは高まっている。地雷原だった土地は、除去活動後に現地の貧困農民に返還され、彼らの生活基盤となる糧を得るための農地や、養魚・養鶏・畜産などの用地へ転用される。これらが、この国の産業基盤の底辺を支えるものとなる。
現在、第二次研究支援無償の地雷開放地は、既に一部の農地の貧困農民への返還や引渡し作業が進められ、米やトウモロコシなどの商業作物も作付けが始まっている。我々に対し地域農民から感謝の言葉が寄せられた。
第二次研究支援無償は、地雷除去機の研究開発が主目的であるものの、地雷除去員への安全の提供、新たな技能の習得、地雷除去地の農地への転用など、地域農民への裨益が非常に高いことを証明した。
今後は地雷除去活動と地域復興支援をリンクさせた事業への展開が望まれている。
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