2009年10月、パキスタン北部に位置するバタグラム県で行われていた、バタグラム男子短大校舎の再建工事が完了しました。これは、2005年10月8日に発生した大地震の被災地を対象とした日本の復興支援の一環として行われていたものです。
JICSはこの支援の調達代理業務を担当しており、地震により被災した教育、保健医療、インフラ分野における124施設の再建プロジェクトに携わっています。
今回、工事が終わった男子短大は、教室棟、講堂、学生寮および教師寮からなる、約500人の学生が学ぶ施設で、人文社会科学、基礎工学、基礎医学の3つの学科が設置されています。
本プロジェクトの再建工事にあたっては、耐震設計を取り入れつつも、費用をできるだけ抑えるため被災した建物の状況にあわせた的確な施工に努めました。学生寮は被害がそれほど大きくなかったため、強度調査を行ったうえで1階部分は取り壊さず耐震補強および改修工事を行い、2階部分のみ軽量構造建築で再建しました。一方で、教師寮については当初は耐震補強工事のみで済ませる予定でしたが、柱や壁に新たに亀裂が発見されたため、旧施設を取り壊して建設を行いました。
また本プロジェクトでは、学生たちが通学の際に利用する、バタグラム川に架けられている橋の再建も行うことで通学環境の改善にも貢献しています。
施工期間中は、反政府武装勢力が発射したと思われるミサイル弾が建設中の屋根に着弾するなど、治安面でのさまざまな不安が尽きませんでしたが、コンサルタントや施工会社をはじめ地元関係者を含む多くの人々の協力によって問題を乗り越え、無事に施設を完成させることができました。
引渡し式において、学校長は「この素晴らしい施設をさらに充実させ、よりよい教育環境を整えたい」と述べ、日本の援助に対する謝意を表しました。短大を管轄する州政府の代表者からは学校長の希望を受けて、教育環境のさらなる整備と改善のための予算を設ける意向が伝えられました。
教育環境の充実は、次代を担う人材の育成に欠かすことはできません。今後、この施設がさらに発展し、地域・国を支える人材が育成されることへの期待と喜びの声が広まっています。