2005年にパキスタン北西部を襲った震災に対する復興支援の一環として、日本政府は震災直後より教育、保健医療、インフラ分野における124施設の再建プロジェクトを実施してきました。JICSは、パキスタン政府の調達代理人として、入札開催、業者契約、納入管理、施設建設の進捗管理および資金管理を行い、プロジェクトが円滑に進むよう努めてきました。
このうち教育施設については、ラジドハリ女子小学校が2010年5月に完成したことにより、計画されていたすべての教育施設の再建が完了しました。本支援で再建された教育施設は、小・中学校、高等学校及び短大を含む、計99校(内39校が女子校)です。本支援で再建された教育施設は、大震災の悲劇を二度と繰り返すことのないよう、すべての施設を耐震設計にて再建しました。
今回完成したラジドハリ女子小学校を含め、再建された学校のほとんどは山間地にあったため、工事実施にあたっては困難な問題がいくつもありました。例えば、車が通れる道がなく、レンガやセメント、鉄筋などの建設資機材をすべてロバや人力で運ばなければならない工事現場も少なくありませんでした。また、土砂崩れで道路が寸断されて建設現場にアクセスできない事態や、大雪に見舞われ建設作業を進められないこともありました。
さらに、地元の方々の理解を得ることに苦労をする場面もありました。土地の所有者が小学校建設に同意したにもかかわらず、その親族が建設に反対して工事が妨害されたり、学校のトイレ建設に隣地の住民の理解が得られないこともありました。
そのような際は、現地の自治体関係者や地元の有力者の協力なども得ながら、ねばり強く対話を重ね、最後には理解していただくことができました。
全教育施設の完成を受けて、バタグラム県震災復興局から日本国政府と日本国民に対する感謝状をいただきました。感謝状には、日本政府による震災復興支援を「忘れることのできない貢献」と書かれており、「困難や危険、障害にもかかわらずJICSを通じて行われた支援が成功裏に完了したことに対して、バタグラムの人々の感謝の気持ちが日本国政府や日本国民に届くことを願っている」と記されています。
99校の教育施設の再建完了により、学校不足に悩む山間地の教育環境が改善され、それぞれの学校で学ぶ子どもたちが未来のパキスタンを築いていってくれることを願いながら、JICSは本復興支援プロジェクトの完了を目指し、引き続き尽力していきます。