2010年7月下旬から8月初旬にかけて、パキスタン北部に位置するバタグラム県バティアン診療所など3つの診療所の再建が完了しました。
2005年10月8日に発生した大地震によって被災した地域の復興を支援してきた本プロジェクトにおいて、JICSはパキスタン政府との調達代理契約に基づいてこれまで教育、保健医療、インフラ分野の124施設の再建事業における調達業務を担当してきました。すでに終了していた橋梁と教育施設の再建工事に加え、今般、診療所が完工したことにより、JICSが担当した全ての再建事業が完了し、パキスタン政府に引き渡されたことになります。
本プロジェクトで再建した24ヵ所の保健医療施設のうち多くが、山間地に位置する地域診療所です。そういった地域診療所の再建工事に関しては、建設現場が山間部の奥地にあるため、車両では立ち入ることができず、建築資材や什器の輸送に際して大変な困難に直面してきました。なかには、JICS職員が恐怖を感じるほどの急な斜面を半分滑りながら歩いて降りていかなければたどり着けない建設現場や、雨が多く降ると川が増水し行き来ができなくなる建設現場もありました。建設資機材の運搬の際には、ロバなどの家畜あるいは作業員自らが重い建設資機材を抱えて何百回も往復したこともありました。
このような状況の中でも、施工品質を確保するため、建設コンサルタントは頻繁に建設現場を回りきめ細やかなチェックを行い、JICSは地域住民の協力も得ながらプロジェクトのマネジメントを続けてきました。
プロジェクトが終盤にさしかかった2010年7月末から8月にかけて、パキスタン全土を大雨が襲いました。想定外の雨量により施設から土砂が流出したり建設現場へのアクセスができなくなるなど、工事の続行が危ぶまれたこともありましたが、関係者の努力によってどうにか問題を乗り越え、無事に完工し施設を引渡すことができました。
本プロジェクトで完工した保健医療施設は、すでに利用が開始されており、地域住民の健康確保と疫病予防に貢献しています。特に山間部の奥地に住む人々の保健医療へのアクセスを大きく向上させることができました。
災害後の瓦礫の撤去から始まった再建工事は、4年5か月を経てすべての施設が完工しました。本プロジェクトの工事や施工監理は決して容易ではありませんでしたが、関係者が一丸となって地域の人々の生活向上のために尽力してきました。最後に完工したバティアン診療所の引渡しでは、関係者がこれまでの苦労をお互いにねぎらいながら感慨深く施設を眺めていました。