国内勤務者リレーエッセイ

No.13 「初めてのリベリア出張」

長澤 ロベルト 伸治 (業務第二部 機材第一課)

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コミッティの様子
(左奥から時計回りに筆者、在ガーナ共和国日本国大使館(リベリアを兼轄)書記官、リベリア外務省副大臣、農業大臣、農業副大臣、通商産業省副大臣、外務省職員)
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調達した米
(米配布企業の倉庫にて)
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モンロビアの港に近いスラムを視察した際、
そこで暮らす子供たちと

 日本政府は無償資金協力によって、米の購入資金をリベリアに供与しました。しかし、この援助資金で輸入された米はリベリア国民に無料配布されるわけではありません。「なぜ貧しい人に対して無料で米をあげないのか?」と思われるかもしれませんが、今回の食糧援助で届けられた米(約1万2千トン)が無料で市場に出回ると、現地で通常販売されている米が売れなくなってしまいます。そのため、市場に競争性を与えるよう、援助米は現地で売られている米よりも、やや安い価格で全国民を対象に販売され、その販売代金は「見返り資金」としてリベリア政府が開設する口座に積み立てられます。この見返り資金は、日本政府の承認を経て、リベリアの社会経済開発プロジェクトに活用されます。過去の食糧援助の見返り資金は、リベリア産米の増産プロジェクトに活用され、現在全国の公立小学校の給食では、リベリア産米が提供されています。日本国大使館及び現地政府はこの一連のプロセスをより効果的、効率的に実施するため、きめ細かくモニタリング・評価しています。

 今回のコミッティには、リベリア側より財務省、外務省、農業省、通省産業省の大臣や副大臣をはじめとした政府関係者だけでなく、民間より米の配布を担当している企業の代表者も出席しました。米配布企業からは、消費者のニーズや消費動向、販売地の決定、販売から見返り資金積み立てに至る業務上の問題点などが報告され、活発な意見交換を通じて問題の解決策など合意に至りました。

 今回、アフリカのサブサハラ地域に行くこと自体初めてで、リベリアに関する知識も豊富ではなく、悲惨な内戦を経験した国であることから、出張前は多少暗いイメージを持っていました。リベリア出張を通して、現地関係者の官民一体で食糧問題解決に向かう情熱や、視察で訪れたスラムの厳しい環境で暮らす子供たちの明るく無邪気な笑顔に触れ、プロジェクトの意義を自身で改めて確認すると共に、入団一年目でこの機会を得たことに感謝しました。また、大臣やその他政府高官の方々から、リベリアの発展には、日本の援助、そしてJICSの調達代理業務が引き続き必要不可欠であるというお話を直接伺い、自分の仕事にとてもやりがいや誇りを感じました。今後も、この気持ちを忘れず、各ステークホルダーとの円滑なコミュニケーションや、きめ細かな業務を通じて、リベリア、そしてその他の途上国の人々の生活環境が少しでも改善されるよう、日々努力していきたいと思います。

No.12 「地域第二課から始まった私の国際協力」 (JICS REPORT 2013年4月号掲載)

村上 敏生 (業務第三部 地域第二課)

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緊張した面持ちで入札会の司会を務める筆者

 2012年4月に入団した私が配属された地域第二課は、組織改編により新たに設置され、JICSが実施するベトナム・ラオス・カンボジア向け案件の多くを担当し、最近ではミャンマーの一部の案件も担当しています。私は、ラオス向け環境プログラム無償とミャンマー向け貧困農民支援( 2KR)を担当し、先輩職員の指導を受けながら相手国政府関係者との折衝や、入札会開催などを行っています。発展著しい東南アジアの国々に関われる業務に、たいへん刺激を感じています。

 JICSでは主にスキームごとに課が形成されますが、当課は当該国における複数のスキームを跨いで担当する地域課です。国際協力の業務は、普段の電話やメール以外にも現地への出張など関係者とのやり取りが欠かせませんが、地域課の職員は、JICSが担当している同国内のほとんどの案件を把握しているため、複数スキームの業務を同時並行で遂行でき、効率的な業務の実施と現地の関係者とのより強固な信頼関係の構築が期待されています。

 当課は発展過程にあり、その強みを今後より多方面に活かせると考えています。例えば、2012年4月に開催された「第4回日本・メコン地域諸国首脳会議」において、日本政府は2013年からメコン地域において円借款・無償資金協力・技術協力を活用して支援を行うと表明していることから、この地域を担当する当課の重要性はさらに高まっていくと考えています。

 今は、新規事業を提案できて、何でも相談できる雰囲気がある地域第二課に配属されたことに幸運を感じています。私の国際協力への関わりは始まったばかりですが、現場の声に耳を傾け、途上国の発展のためにできることは何か、人々にどのように寄り添うことができるのか、常に自身に問い続けていきたいと考えています。

No.11 「コミュニケーションを大切に」 (JICS REPORT 2013年1月号掲載)

岡崎 恵美 (業務第三部 国際機関課)

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各国から関係者が多数集まる
国際機関主催の国際会議

 日本政府が実施するODAには、開発途上国を直接支援する二国間援助と、国際機関を通じて支援する援助があり、私の所属する国際機関課は主に後者に関した業務を行っています。今年の4月に新設された全員で6名の小さな課で、こまめに情報共有や相談をしながら業務を行っています。国際機関に係る案件は、二国間援助の案件よりも関係機関が多いのが特徴で、関係者の意向の確認・調整に難しさもあります。そのようななか、課のメンバーは皆、関係者とのコミュニケーションを大切にしながら粘り強く業務にあたっています。

 また、出張も多く、時には課の6人中5人が出張に行き、それぞれが複数国を訪問することもあります。出張中も必要に応じて連絡を取っていますが、出張が多い時期を乗り越え、久しぶりに全員が揃った時は、皆の無事の帰国を感謝する気持ちになります。

 1989年に設立されたJICSは、2006年から国際機関に関する業務を開始していますが、それまでの地道な活動を通じて培った信頼が、国際機関を通じた援助案件の受託につながったのだと考えています。時には国際会議などの華やかな場面に居合わせることもありますが、当課の業務は二国間援助の調達手続きと同様、ほとんどが地味で細かい作業です。しかし、対象国が複数であるということは、裨益範囲が広い(裨益対象者が多い)ということであり、その分やりがいがある業務だと言うこともできます。国際機関を通じた援助案件の円滑な実施のため、JICS内外のコミュニケーションを大切にしつつ、これからも課の仲間と力をあわせて頑張っていきたいと思います。

No.10 「JICSの品質管理の要として」 (JICS REPORT 2012年10月号掲載)

荒井 大三 (企画管理部 品質管理課)

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時には社内研修の司会も担当(筆者)

 2012年4月に品質管理支援室から「課」になった、総勢10名の品質管理課では、多様な経験と高い専門能力を持つベテラン集団として「品質管理の要」となる業務を行っています。

 以前のJICSの業務の大半はJICAからの委託業務で、JICAの承認などの手続きを経る形で実施されていましたが、近年はJICAを経由しない、調達代理機関として自らが案件の全体を管理する業務が増加したため、案件を遂行する建設会社やコンサルタントの管理、契約先から提出される各種書類の事前チェック、仕様書の精度・品質の管理が喫緊の課題となっています。

 JICS全体では、独自の調達ガイドラインの制定が行われ、また各種セミナーによる職員の意識向上などが図られていますが、実施中の案件に大きなトラブルが発生することもあり、JICSが管理する案件でのトラブルや問題への対処など、JICS自らがさまざまな問題に直接対峙する局面が増加しており、品質管理課の役目もその重要さを増している状況です。案件のトラブルや問題は、JICSの業務遂行能力に対する施主や関係機関からの信頼低下につながる可能性があるうえ、これらの問題対処のために時間・人員・資金を注ぎ込む結果、JICSの収支にも悪影響を及ぼします。

 品質管理課ではそうした問題発生を最小限に抑えるため、各種書類のチェックや相談・提言を行うほか、調達の原点である仕様書のチェックや作成のサポートをしています。さまざまな経験や能力を持つ集団(JICSの“X-men”)品質管理課を、普段からうまく利用してもらい、案件のトラブルを最小限にし、事前に問題の芽を摘み取ることにつなげたいと思います。

No.9 「円借款ガイドラインの改訂に伴い、新規業務を受託」 (JICS REPORT 2012年7月号掲載)

森 たのみ (業務第三部 資金協力支援課)

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資金協力支援課のメンバーと共に
(著者は前列右端)

 こんにちは、資金協力支援課の森です。欧州や南米出身者、バイリンガル並みに語学に堪能な方などさまざまな人が配属されている当課では、円借款プロジェクトに係る調達関連書類を、JICAのガイドラインや調達書類雛形と照らし合わせ、問題点などを指摘、改善提案する業務を行っています。調達手続きに必要なJICAの同意に先立って調達書類の基本的な準拠性を確認するため、通称「一次チェック業務」とよばれています。

 2012年4月、JICAは「円借款の調達およびコンサルタント雇用ガイドライン」の改訂を行いました。ここでは、旧ガイドラインで推奨にとどまっていた調達書類雛形の使用が義務化され、これを機に、調達書類雛形を改訂することとなり、現在、当課では一次チェック業務の経験から得たノウハウ・知識を基に、「改訂ガイドライン(英)のフランス語・スペイン語への翻訳」、「調達書類雛形(英)の改訂」、「改訂調達書類雛形(英)のフランス語・スペイン語への翻訳」を行っています。

 この新規業務では、一次チェック業務で私たちが気付いた問題点や改善すべき点などをJICAと協議し、その結果が書類に反映されます。改訂調達書類雛形が今後、円借款プロジェクトで使用されるのですから、大変、有意義で責任の重い仕事だと感じています。

 私は入団2年目に突入しましたが、新規案件のプロポーザル作成や契約の手続きなどで1年目よりも業務の範囲が広がり、日々勉強しつつ刺激のある充実した毎日を送っています。

No.8 「東日本大震災以降、注目を浴びる太陽光発電システムの導入」 (JICS REPORT 2012年4月号掲載)

大島 正裕 (業務第二部 特別業務第二課)

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パラオ国際空港の駐車場に設置された
太陽光発電システム

 この2年間、特別業務室(現特別業務第二課)では、2009年度に開始した環境プログラム無償「太陽光を活用したクリーンエネルギー導入計画」(以下、「太陽光」)や国際機関の事業などを担当してきました。ここでは、私も担当する「太陽光」に絞ってお話しします。

 「太陽光」がスタンダードな機材案件と大きく異なる点は、機材調達のみならず、機材を現地で据え付けることにあります。据え付け工事もそれなりに大規模なもので、「太陽光」は機材型と、コミュニティ開発支援無償などの施設型の中間に位置する案件といえます。

 専門のコンサルタントが、日射角など自然条件を考慮して技術仕様を決め、これを基に入札を行います。契約相手先は(日本で)機材を船積みし、相手国に到着した機材を各サイトまで運搬します。同時に契約相手先は、あらかじめ機材据え付け用の基礎工事を準備しておく必要があります。据え付け場所は地上設置、駐車場の屋根、そのほかの建築物の屋根など多種多様で、コンサルタントが施工監理に当たる本格的な据え付け工事となります。据え付け後は、既設の送電線と結合させ、最終的に太陽光発電システムとして作動するか試験運転を行い、相手側の技術者へ技術指導を施した後、ようやく完工に至ります。

 「言うは易し、行うは難し」で、当初は「なるほど、なるほど」と経験ある技術者の方々の話に頷いていましたが、いざ案件が始まるや予期せぬ事態が次々と押し寄せ、苦戦を強いられました。室内の会議では、「集電箱」や「配電箱」などの聞き慣れない技術用語が多く飛び交いました。そうした最中、2011年3月に起こった東日本大震災以降、原子力発電への危惧から太陽光をはじめとした代替エネルギーが世論の注目を一気に浴びることになりました。各担当者にとっては、まさに息もつかせぬ2年間でした。

 すでに、数カ国の太陽光発電システムが竣工を迎え、2012年中にはさらに多くの竣工が予定されています。「システム系」と総称される、太陽光発電システムをはじめとした案件での貴重な経験は、必ずやJICSの将来の仕事の幅を広げてくれるものと思います。

No.7 「国際的な調達の現場で、「調達のプロ」たちが大活躍」 (JICS REPORT 2012年1月号掲載)

大泉 千月(業務第一部 企画管理課)

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「JICS調達のガイドライン」を手にする著者

 私は主に日本のODAの調達業務に携わってきましたが、この数年、国際的な調達について学ぶ機会に恵まれたことから、そこで気付いたことをご紹介します。

 JICSは調達機関ですので、職員は調達のプロとなることを目指していますが、調達専門職という職種が存在するわけではありません。一方、世界銀行などの国際開発金融機関(MDB:Multilateral Development Bank)では、調達は一つの専門分野であり、「調達専門家(Procurement Specialist)」と呼ばれる職種の職員がいます。日本では、調達という専門分野が十分に認知されていない気もしますが、国際的には思っている以上に評価されているのかもしれません。JICSという小さな組織の職員であっても、調達に関しては、世界銀行本部の東南アジア局長やアジア開発銀行本部の調達部門の課長とも語り合えます。

 海外では、援助効果の向上を図るため、2003 年に設置されたOECD-DAC(Organisation for Economic Cooperation and Development-Development Assistance Committee)の援助効果・ドナー慣行作業部会のもとで、「公共調達の共同体(Joint Venture on Public Procurement)」が活動しています。そこでは、MDB、援助国政府および開発途上国政府が、会合・ワークショップの開催、パイロット案件の実施などの共同作業を通じて、開発途上国の公共調達について議論しています。このように、調達に精通した専門家が熱くなれる議論の場があるのです。

 MDBのリーダーである世界銀行が発行する「調達ガイドライン」、「コンサルタント選定・雇用ガイドライン」、「標準調達書類」などは国際的なスタンダードと位置付けられます。また、数年にわたり、世界銀行が主導のうえ、MDBなどが共同で調達書類マスタの作成作業を行い、公表しています。JICSにおいても、調達に関する問題発生の予防には、これらのガイドラインや書類を参照することが役立つかもしれません。

No.6 「現地で到着を待つ人々を思い、適切な機材調達を目指す」 (JICS REPORT 2011年10月号掲載)

殿岡 麻友子(業務第二部 機材第三課)

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驚異的な集中力で要請機材リストに立ち向かう筆者

 私は機材第三課に所属し、主に「本邦調達支援業務」を担当しています。これは、日本の誇る各分野の優れた技術を、途上国の当該分野の技術者たちに伝えるために必要となる機材について、日本国内で調達する手続きを支援する業務です。

 さて、この業務は、“要請機材リスト”が、委託元である独立行政法人 国際協力機構(JICA)にて作成され、送られてくるところからスタートします。要請機材リストの作成には、スタッフが多数関わります。主に技術協力プロジェクトの専門家やコンサルタントなどが原案を作成し、JICA調達部、当該プロジェクトなどを主管するJICA事業部、プロジェクト実施国のJICA現地事務所などで確認を行った後に確定されます。

 このように、調達支援業務には多くの人たちが関わっているため、例えばJICSでの調達手続き開始後に、現地の事情により、求める機材の能力に大幅な変更が必要となった場合などは、関係者全員のコンセンサスを得る必要があります。そのためには、簡潔かつ明確な説明を適切なタイミングで行い、関係者内で共通認識を持つことがとても重要です。これがうまくいかないと、コンセンサスを得る作業に思いのほか時間を要し、結果として調達スケジュールの遅れを招くこともあり得ます。

 忙しい業務の合間にどうにか心を落ち着けて、「どのように説明すれば関係者の理解を得られやすいだろうか?」と考えつつ、オフィスの窓から遠い目をして東京・新宿の空を眺める機材三課の職員は私だけではない……かどうかはよくわかりませんが、現地で機材の到着を待ちわびる人々の姿を心に描き、気持ちを鼓舞して事態の収拾にあたり、迅速かつ適正な手続きを経て適切な機材が調達されるよう、機材三課の職員たちは今日も頑張っています。

No.5 「入札図書マスターへの道? 『ご当地図書』との格」 (JICS REPORT 2011年8月号掲載)

高野 彰子(業務第一部 施設第三課)

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「ご当地図書」を囲んで、ほかの国内担当者と打ち合わせを行う筆者(右端)

「同じ無償スキームなのに、プロジェクトごとに入札図書の書式が違う!」

 機材の調達をメインとする部署から、施設建設の管理をメインとする部署に異動してきた際、最も驚き、かつうろたえたのが、建設企業などを選定する入札で使われ、選定された企業との契約条件も含む重要書式である「入札図書」の内容が、プロジェクトごとに異なることでした。

 JICSの担当する機材調達プロジェクトでは、長年のノウハウが結集された入札図書書式が使われており、担当者はそれを基に、相手国やプロジェクトごとの特徴に合わせて微調整をしながら業務を進めていきます。

 ところが施設案件、特に私が担当しているコミュニティ開発支援無償のプロジェクトでは、原則として相手国で流通している書式を採用しています。これは、入札に参加する会社のほとんどが相手国企業であることから、現地関係者になじみのある書式を採用することで、入札をはじめその後数年に及ぶプロジェクトを円滑に進めるためです。

 担当者は、プロジェクトごとに異なる書式と一から格闘することになりますが、現地のものをそのまま採用すれば良いわけではなく、日本のODAの原則やスキームごとに設定された調達のガイドラインに反しないよう、注意を払いながら業務を進めていかねばなりません。

 前線に立つ現地駐在者の苦労もさることながら、本部で複数のプロジェクトを担当する国内担当者は、各国から送られてくるさまざまな「ご当地図書」を相手に、毎回、緊張感を持ってチェックにあたっています。そのうち、どんな図書を見ても驚かない「入札図書マスター」に、私はなる!かな?

No.4 「案件の実施に不可欠な、国内担当による後方支援」 (JICS REPORT 2011年4月号掲載)

岡村 卓司職員(業務第二部 機材第二課)

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出張先の東ティモールで相手国政府関係者、在東ティモール日本大使館員などと調達品目に関する協議を行う筆者(写真奥 左端)

 業務第二部機材第二課では、一般ノン・プロジェクト無償案件や環境プログラム無償案件を担当しています。案件を実施する際には、複数人でチームを編成して業務を進めますが、調達代理契約の締結、調達品目の決定、調達品目の技術仕様などを相手国関係者と話し合うため、何度か短期の海外出張をする必要があります。

 案件の状況に応じて、海外出張に出る担当と後方支援する担当(国内担当)に分かれて業務を進めます。海外出張担当になるときもあれば国内担当に回ることもあり、当然ながら、どちらの業務も正しく理解しなければなりません。

 JICSといえば海外業務に注目が集まりがちですが、国内担当も重要な役割を担います。例えば、入札図書の付属書となる「仕様書」に記載する技術仕様の確認を目的とした出張の場合、事前に必要なカタログなどを揃え、仕様書の案も作成したうえで渡航し、相手国関係者との協議に臨みます。しかし、協議がこちらの思い通りに進むことは稀で、想定外の質問や新たな要請が持ち上がることが多々あります。この時、出張先で収集できる情報には限界があるため、国内担当に照会します。

 国内担当は、素早く要点をつかみ、必要な情報を収集し、出張者へフィードバックします。また、出張先では大小さまざまな判断が必要になる場面にも遭遇します。出張者の一存で決められない事項については、国内担当が受け継ぎ、JICS本部内で話し合ったり関係機関に確認するなどして、対応方針を確認のうえ、出張者に伝達します。

 このように、案件は、現地で先方と交渉・協議する出張担当の力だけでなく、後方支援する国内担当との連携作業で進んでいくものなので、今後もチームワークを大切にして、業務を行っていきたいと思います。

No.3 「はるか日本から、子どもたちの教育環境の改善をサポート」 (JICS REPORT 2011年1月号掲載)

小林 麗子職員(業務第一部 施設第二課)

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学校の外壁に並んだ、エチオピアと日本の国旗
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新しい教室で先生の話を聞く生徒たち

 鮮やかな空色の学校と、おそろいのセーターを着た子どもたち。カメラに向かってポーズする子や恥ずかしそうな表情の子、元気に手を振る子など、さまざまです。エチオピア国アジスアベバ市の小学校で行われた竣工式当日の様子です。

 私は学校建設などの施設案件に携わっており、現在は主にエチオピアとマラウイの案件担当として、現地で施工会社などを選定する入札業務や案件監理業務を日本から後方支援しています。

 アジスアベバ市の学校建設案件では全7校を建設中で、2010年9月までに、数校が完工し、そのうち1校の竣工式が盛大に行われました。

 出張した職員が持ち帰った写真には、式に出席したエチオピアと日本両国の政府関係者とともに学校の完成を喜ぶ生徒たち、ダンスを披露する現地の方々などが写っていました。写真を見るうちに、思わず顔がほころび、いつか子どもたちが勉強している姿を、直接見てみたいと思いました。エチオピアでは子どもの数に比して学校や教室数が少ないため、二部制の学校もあって、教室の増設や学校の新設のニーズがまだまだあるようです。今後、子どもたちが少しでもよい環境で勉強する機会を得られるようになってほしいと思います。

 マラウイの案件はまだ始まったばかりですが、今後、中等学校6校に教室を増設する予定です。現地企業を活用して行う施設案件は、日本の企業を活用する場合と比較すると、プロジェクト期間が長期に及ぶうえ、工程管理や質の確保のための配慮も必要となります。現場での苦労も多いですが、現地の方々のご協力に感謝しつつ、完工時の喜びや達成感を楽しみに、これからもここ日本から現場をサポートしていきたいと思います。

No.2 「国内出張で船積み立会いにハマる」 (JICS REPORT 2010年10月号掲載)

最上 晶代職員(業務第二部機材第一課)

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袋詰めの米が42袋入った、日の丸付きスリングバッグ

 JICSの仕事といえば「国際協力」。私は業務第二部の機材第一課に所属して主に食糧援助に携っており、出張先は海外がメインですが、国内出張を伴う業務もあります。今回は、その様子を紹介したいと思います。

 先日、ベナン共和国向け援助米の船積み立ち会いのため、高松港に出張しました。船積み立ち会いでは通常、援助米が船に積み込まれる様子を直接確認するほか、物流会社・倉庫会社・品質検査機関の方ともお会いして、いろいろとお話を伺います。倉庫から出庫された後に行われる検査や船への積み込みを、実際の作業の流れに沿って確認します。今回は船のデッキに上がって、船内での作業の様子も確認しました。

 日頃は被援助国政府やプロジェクトに関連する組織関係者との連絡や書類作成などの業務がメインになるため、調達に携っているとはいえ、援助米が実際にどのような手続きを経て輸送されるのかを具体的にイメージするのが難しい部分もあります。しかし、実際に現場を見て、関係者に会って話を伺うことで知識も一層深まり、業務に対するモチベーションも上がります。例えば梱包に関してですが、「アメリカ米には、バラのものとスリングバッグに入っているものがある」という知識についても、実際に自分の目で見ることで、より明確に理解できます。まさに、「百聞は一見に如かず」です。

 翌週には、別の案件の船積みの立ち会いのため、小倉港にも行ってきました。行く先々で、それぞれの港の違いや、船の違い、積み込み方法の違いなども確認でき、ますます船積み立ち会いの奥深さにハマッてしまうのでした。

No.1 「トラブル対処も出張の醍醐味」 (JICS REPORT 2010年7月号掲載)

川崎 竜司 職員 (業務第一部施設第一課)

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サイト調査時に車がパンクし立ち往生したことも

 “国際協力”という名前のとおり、JICSのたくさんの仲間・同僚が在外公館などに出向したり、海外のプロジェクトオフィスに長期滞在して活躍しています。一方、海外に長期滞在するわけではありませんが、出張ベースで海外に赴き、各プロジェクト実施のために励んでいる人も多く、JICS職員の大部分がこのスタイルで日々の業務にいそしんでいます。出張ベースとはいえ、一年の8割を海外で過ごす猛者もいます。

 私は施設第一課に所属し、国内および出張ベースでプロジェクトに従事しています。先日も環境プログラム無償業務で、エチオピアへ短期ながら出張する機会がありました。事前に周到な準備をしても、やはり相手があり、文化の違いもあってか予想を超えたトラブルが起きるのは珍しくなく、いつの日からかトラブルにいかに対処するかが出張の醍醐味のひとつと考えるようになりました。

 今回のエチオピア出張でも、サイト調査時に車がパンクと故障を繰り返し、連絡が取れない場所で立ち往生した挙句、現地の人しか使用しない乗り合いバスでサイトから戻ることになったときは、ヒヤッとする運転を繰り返すバスの中で「無事に帰れますように」とひたすら祈り続けました。

 出張中は限られた時間で業務の目的を達成するにあたり、時間に追われ、書類作成に追われ、予測不能な事態や非日常的な問題にも追われながら、あっという間に時間が過ぎていきます。それでも、日本に帰国後は、翌日からいつもと同じ毎日が始まるので、なんだか不思議な感覚に襲われます。

 出張先での業務、国内での業務、そのほかの雑多な業務において、途上国の発展に少しでも寄与したいという熱き想いと、出張先でさまざまな人や出来事に出会う楽しみを抱きつつ、JICS職員の毎日は過ぎていくのでした。