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JICSの歩みと役割

JICSの歩み

 日本の政府開発援助(ODA)予算が増加を続け、対象国が拡大していた1980年代、外務省を中心として、無償資金協力における「日本の顔が見える援助」を実現するために資金管理から調達監理までの一連の業務を行う、公正性・中立性を確保した調達専門機関が必要であると考えられるようになりました。
また、JICAが担当する技術協力に関しても機材調達業務の急増を受け、調達や機材の専門知識に基づきJICAを支援する組織の必要性が高まりました。
これらの、外務省とJICAの構想に基づき、民間企業・団体からの出捐金をもとに、無償資金協力と技術協力の調達業務を担当する日本初の公的な調達専門組織として、1989年に当財団 “JICS”が設立されました。

 ODAにおける「調達」とは、援助資金を用いて、国際的なルールに基づき、途上国で必要となる資機材やサービス(輸送・設計・施工など)を入手することを指し、公共調達と同様に中立性・公正性・透明性の確保が求められます。JICSは設立以来、ODAや各種の開発途上国支援に関連して、現地で必要とされている機材や役務を適正かつ効果的に選定・調達するため、日本政府や被援助国政府だけでは必ずしも十分に対応しきれない技術仕様書などの入札書類作成、入札実施・評価、資金管理など、技術的・専門的なサービスを提供してきました。

 近年では紛争や災害後の緊急復興支援や平和構築、コミュニティ開発支援などに関する施設整備型案件の増加にともない、案件全体の進捗監理業務を行うマネジメント型の業務も増加してきています。
また、さらには日本政府や途上国政府からだけでなく、国際機関からも同種の業務を受注するなどクライアントも多様化してきています。

年表

日本のODAとJICSの役割

 グローバル化が進んだ昨今、国際社会は、環境問題や感染症の広がり、金融・経済危機など、一国では解決できない、国境を越えた多くの課題に直面しています。日本は国際社会の一員として、政府開発援助(ODA)を通じた支援を行うことが求められています。
また、私たちは、資源・エネルギーや食糧の多くを、開発途上国を含む海外からの輸入に依存しています。国際社会の安定は、私たち日本人の暮らしと深く関わっているのです。
国際社会の平和と安定のために、そして、それを通じて日本の安全と繁栄を確保するために、日本はODAを重要な国の政策として実施しています。

 ODAは、開発途上国の経済や社会の発展、国民の福祉向上や民生の安定に協力するために政府が行う経済協力であり、開発途上国を直接支援する二国間援助と、国際機関を通じて支援する多国間援助があります。二国間援助は無償資金協力・技術協力・有償資金協力の三つの形態から成ります。
以下は、JICSが関わる主な事業の概要です。

以下の図の文言左側にある赤い三角マークをクリックすると関連ページ、用語の説明ページがご覧いただけます。

日本のODAとJICSの役割 無償資金協力関連事業 技術協力関連事業 有償資金協力関連事業 国際機関等関連事業 食料援助(KR) 緊急無償 文化無償 日本NGO連携無償 環境・気候変動対策無償 紛争予防・平和構築無償 防災・災害復興支援無償 コミュニティ開発支援無償 ノン・プロジェクト無償 貧困農民支援(2KR) 感染症対策無償 研究支援無償
調達代理
 JICSが、主に相手国政府との契約により、相手国政府の「代理人」として無償資金協力などに係る資機材の調達や役務の選定に関して入札会の開催などの一連の調達プロセスを管理する業務を行うもの。
調達監理
 JICSが、相手国政府との契約により、相手国政府を補佐する立場で無償資金協力に係る資機材の調達や役務の選定に関する一連のプロセス(入札図書の作成、開札の実施、調達契約の締結促進、業者による資機材の製造・輸送・納入まで)を管理する業務を行うもの。
無償資金協力関連調査
 外務省やJICAなどとの契約に基づき、相手国政府などから日本国政府に要請された内容に関して、その妥当性・資機材の仕様および価格の検討などの解析を行うもの。
現地調達支援業務
 JICAなどとの契約に基づき、JICA在外事務所での調達体制整備のための要員派遣を行うもの。
技術協力専門家派遣
 JICAとの契約に基づき、技術協力の一環として、JICSが事業を実施している援助関連の分野の専門家を派遣するもの。
有償資金協力関連事業
 JICAとの契約に基づき、相手国政府から提出された調達関連書類の内容について、ガイドラインなどに準拠しているか審査するとともに、問題点・不明点の有無などについても確認・報告を行うもの。
上記以外にも、有償資金協力案件における各種実施促進、調達手続きの事後監査も行っている。
国際機関等事業
 国際機関等が実施する案件に関して、関係機関との契約の下、その内容に応じて調査、調達業務、案件の実施監理業務、国際機関への報告・調整などを行うもの。

調達代理機関としてのJICS

 JICSは、日本の政府開発援助(ODA)や各種の開発途上国支援において様々なニーズに即した調達業務を行っており、中でも、無償資金協力に深く関わっています。
近年、無償資金協力プロジェクトの実施にあたり、「調達代理方式」の案件が増えてきています。これは、調達代理機関が、相手国政府との契約に基づき相手国政府の「代理人」として、資金管理とあわせ、資機材や役務の選定・調達に関する一連の調達プロセスの管理・監督を行うものです。
この方式は、国際調達に関する専門的な知識・ノウハウを有し、かつ中立的な立場となり得る非営利法人が調達代理機関として資金管理と調達手続きを行うことで、公正性や透明性などが確保されると同時に、案件を効率的かつ円滑に進めることができるというメリットがあります。
JICSが関わっている無償資金協力の大半がこのタイプの事業です。調達代理方式の案件においては、JICSが相手国政府の代理人として業務を遂行することとなり、重い責任を担っています。

無償資金協力プロジェクトにおけるJICSの位置付け

無償資金協力プロジェクトにおけるJICSの位置付けの図

*E/N: 交換公文(Exchange of Notes)のこと。書簡の交換によって、国家間または国家と国際機関との間における国際法上の権利義務関係を設定した、文書の形式。援助に関するE/Nには、日本政府と受入国政府との間で合意した援助供与内容が記載されている。

無償資金協力事業のプロジェクトにおける調達の一般的な流れと、その中におけるJICSの調達代理業務はこちらをご覧ください。