ミャンマー 2階建て大規模校舎が竣工
2017年4月21日
新築された2階建て大規模校舎
ミャンマーでは、国土を縦走するエーヤワディ川が毎年氾濫し、多数の住宅や学校が浸水被害を受けています。2015年7月には、降り続いた大雨により、甚大な洪水被害が発生し、ミャンマー政府は日本政府に対して、被災した校舎再建・修復などの支援要請を行いました。日本政府は、支援のひとつとして、ザガイン地域、マグウェイ地域、バゴー地域、エーヤワディ地域を中心とする公立小中高等学校の再建を目的とした無償資金協力「洪水被災学校再建計画」の実施を決定しました。JICSは、ミャンマー政府の代理人としてプロジェクト監理などを担う調達代理機関に公募を経て選定され、2016年3月に調達代理契約を締結し、設計、施工会社の選定(入札)、工事監理、資金管理などの業務を行っています。
このたびマグウェイ地域アウングラン郡区のアウングラン高校※1に、今までこの案件で最大規模の2階建て校舎が完成しました。2017年4月6日、Kyaw・Kyyne Tun アウングラン郡区長をはじめとして生徒200名、教員、コミュニティーの方々、政府関係者など200名以上が集まり、同校で引渡し式が開催され、式典では、JICSのプロジェクト担当施設第一課長篠田から引渡し書類をNyunt Nyunt Sweアウングラン郡教育事務所長にお渡しました。
このプロジェクトで再建する学校は、ミャンマーの僻地農村の小さな学校が多いのですが、この学校は地区の拠点となる大規模校です。また、校舎が国道に面した敷地にあり、工事中から地域の方々の注目を集めていました。そうしたことから、引渡し式には地区の方々が多数集まり、民族衣装を着た生徒による踊りも披露され、盛大かつ華やかな式典となりました。保護者代表の方は流暢な英語で、校舎を指して「ミャンマーでは最新式となる避雷針付のすばらしい校舎を建設していただいた。校舎は地域の重要な資産であり、私たちは日本のみなさんからのこの支援をずっと忘れません。」と述べられました。
引渡し式
引渡し式の朝。
たくさんの生徒や地元関係者が待ち構えていました
篠田(中央右側)より引渡し書類をNyunt Nyunt Swe教育事務所長(中央左側)に渡しています。
生徒が民族衣装を着て踊りを披露してくれました。2ヶ月以上練習をしたそうです。
日本の着物風にアレンジした衣装を着る生徒の踊り
引渡し式では教室棟建設の経緯を説明した銘板の上に、植物の葉にひたした香水をかけてお清めの儀式を行いました。
2階建て校舎の前で記念撮影
2016年8月洪水発生時の建設現場。囲い内側の教室棟建設予定地が完全に浸水していました。
トイレ7ブースは2棟に分けて設置。
手前が車椅子用スロープ付き棟。
2階建て校舎は鉄筋コンクリート造2階建て、高さ10.2m、延床面積810uで、8教室を有しています。当初、1階の床は1.0mの高さで設計しましたが、工事中の2016年8月に発生した洪水をJICSの担当者が目の当たりにし、より高い洪水時の水位でも浸水しないよう、約1.6mに設計変更を行いました。また、トイレは車椅子用のスロープや屋根にあたる雨水を再利用した手洗いを設けるなど、設計に細かい配慮を加えました。今回のプロジェクトの最大の特徴は、JICSがプロジェクト監理を行うだけでなく、設計も担当していることです。この役割の一体化により、「より良い再建(Build Back Better)※2」という視点での設計変更などを、建設スケジュールに影響を及ぼすことなく迅速に行うことができました。
洪水被害により悪化した子供たちの教育環境を早急に改善するため、雨季の工事中断や厳しいスケジュール管理に苦労しながらもプロジェクトは順調に進んでいます。現在、続々と竣工を迎えており、プロジェクト開始した2016年3月から約1年後の「水かけ祭り※3」までに、21校が竣工しました。
本プロジェクトでは、ザガイン地域、マグウェイ地域、バゴー地域、エーヤワディ地域で、約80校が再建される予定です。
※1 ミャンマーの高校(High school)は、小学校から高校生まで計11学年が同じ学校に通っています。
※2 より良い再建(Build Back Better):単に災害前の状態に戻るのではなく、災害前よりも強い社会を作ることを目指す考え方
※3 水かけ祭りまたは水祭り:ダジャン、またはティンジャンと呼ばれ、1年の終わりに水をかけ、汚れを落とし、身を清め、新年を迎える仏教行事の一つです。2017年4月12日(水)〜16日(日)に開催され、祝日となります。
このプロジェクトの過去の記事はこちらから
プロジェクト基礎情報
供与(E/N)額 | 12.00億円 |
交換公文(E/N)署名日 | 2016年2月17日 |
調達代理契約(A/A)締結日 | 2016年3月8日 |
契約相手(調達代理契約) | ミャンマー教育省 |
プロジェクト概要 | 2015年7月中旬から発生した洪水により被害を受けた学校のうち、ザガイン地域、マグウェイ地域、バゴー地域及びエーヤワディ地域を中心とした約80校の校舎を再建。 |
JICSの役割 | 教育省の調達代理機関として、施工会社と契約を締結し、資金管理、工事監理を含むプロジェクト全体の監理を行う。 |
調達品目 | 学校建設、教育用家具調達 (施工会社) |
プロジェクトの主な流れ/現状 | 2016年4-5月:施工会社契約締結(第1バッチ11校) 2016年5月:マグウェイ地域にて着工 2016年11月:1校で引渡し式を開催 |