レソト 中等教育カリキュラムが実施できる施設を子供たちへ
2014年6月20日
レソト王国(以下「レソト」という。)は、南アフリカ共和国に囲まれており、国土全体が標高1,500mを越える山岳地帯で、面積は九州の約0.7倍、人口は205万人(2012年)です。
天然資源が乏しいレソトにとって、人材は重要な資源であり、レソト政府は「教育セクター開発計画(2005-2015)」を策定し、2015年までに中等教育の総就学率を85%に向上させることを目標としています※1。しかし、中等教育就学者数の増加に施設整備が追いつかず、施設不足が課題となっています。小学校施設を応急的に中等教育施設として使用する学校が増えましたが、理科実験室がないことなどから、5年間の中等教育カリキュラムに沿った授業が実施できず、中等教育の質の低下も懸念されています。さらに初等教育の義務教育化に伴い、今後もさらなる中等学校就学者増加が見込まれています。レソト政府は中等学校の建設・増設に努めていますが、厳しい財政事情などから十分なスピードでの実施が困難なため、日本政府に協力を要請しました。これを受け、日本政府は調査等を行い、2011年3月にコミュニティ開発支援無償「中等学校建設・施設改善計画」の実施を決定し、10.69億円を供与しました。
建設されたばかりのレリベ県リナレン中等学校 管理・理科実験棟
「中等学校建設・施設改善計画」では、中等学校12校(新規建設6校、既存施設の増設6校)に対して、教室、理科実験室、教職員室、教職員住居、便所を建設し、教育用家具を整備しました。
JICSはこのプロジェクトにおいて、レソト財務開発計画省と調達代理契約を交わし、同省、教育訓練省の代わりに日本より援助された資金の管理、コンサルタントの雇用、施工会社の選定・契約、家具納入会社の選定・契約、工事進捗管理および学校家具等の納入管理を含むプロジェクト監理業務を行いました。現地施工会社の施工遅延による契約解除など、プロジェクト運営において困難な場面もありましたが、関係者の尽力により無事完了にいたりました。電気が通っていない場所にある8校には、太陽光発電装置を設置し、小規模ながら電気が使用できるようになりました。また、各校に理科実験室等が整備され、理数科教育の拡充が期待されています。
新しい教室(視察時)
吉澤大使(左)とタバネ首相(右)による記念石碑の除幕
2014年4月に12校すべての中等学校で引渡しが完了したことを記念して、2014年4月17日にべレア県のレココアネン中等学校にて引渡し式が行われました。引渡し式にはレソト王国のモツォアハエ トーマス タバネ首相、吉澤裕駐南アフリカ共和国日本国大使(レソト王国も兼轄)、木野本浩之JICA南アフリカ共和国事務所長をはじめとして、同校の生徒や地域の方々など1000人を越える多くの方が出席し、盛大に開催され、JICSからもプロジェクトマネージャーが出席しました。
式典ではタバネ首相と吉澤大使による除幕のセレモニーのほか、同校の生徒や地域住民たちによる踊りや歌、小さな子供たちのパフォーマンスが披露されました。
このほかレココアネン中等学校の新しい施設の視察も行われ、両国の関係者共に、中等学校のカリキュラムが実施できる施設に満足していました。このプロジェクトを通じて、新たに4200人が中等学校に就学可能になり、理科実験室やの整備等により、中等教育カリキュラムに沿った教育環境へと改善が期待されています。
引渡し式には、生徒や保護者のほか地域住民の方など、
たくさんの方が参加
踊りを披露する生徒たち
歌を披露する生徒たち
全国から集合した校長先生たちによる喜びのダンス
レソトの民族衣装※2をまとって挨拶を行う吉澤大使
タバネ首相の挨拶
アフリカに対する開発援助のエキスパート
木野本所長の挨拶
日本人プロジェクト関係者も民族衣装で記念撮影
JICA木野本所長(右)、JICA南アフリカ事務所で勤務中の
JICS大平職員(中)、JICSプロジェクトマネージャー篠田(左)
※1 2009年時点の中等学校総就学率は47.7%
マントのように見えるものは、Kobo(コボ)といわれる毛布で、地方の主要産業が牧畜のレソトでは、Koboをまとい馬に乗った、牛飼いの方をよく見かけます。毛布の色に地域性があり、青色は首都マセル、黄色はべレア県の色とのこと。
レソトの国旗
プロジェクト基礎情報
案件名 | 中等学校建設・施設改善計画 |
供与(E/N)額 | 10.69億円 |
交換公文(E/N)署名日 | 2011年3月16日 |
贈与契約(G/A)署名日 | 2011年4月11日 |
調達代理契約(A/A)日 | 2011年5月31日 |
契約相手(調達代理契約) | 財務開発計画省 |
プロジェクト概要 | レソトの中等学校6校の新規建設及び既存中等学校6校の施設拡充(普通教室、理科実験室、教職員室および教育用家具の整備)を行う。 |
JICSの役割 | 本プロジェクトの調達代理機関として、援助資金を管理するとともに、施工会社を始めとするプロジェクト推進に必要な役務や機材の調達及びプロジェクト監理を担当する。 |
調達内容 | コンサルタント(施工監理)、学校建設(施工会社)、家具 (家具納入会社) |
プロジェクトの主な流れ/現状 | 2011年6月:施工監理コンサルタントと契約 2011年10月:施工会社と契約(第1バッチ 8サイト) 2012年2月:施工会社と契約(第2バッチ 4サイト) 2012年3月:家具納入会社と契約 2014年4月:全施設の竣工 2014年4月:全施設の引渡しが完了 |