アフガニスタン マザリシャリフ市内環状道路の竣工

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2016年3月23日

 アフガニスタン・イスラム共和国(以下、「アフガニスタン」という。)の北部マザリシャリフ市で実施している「マザリシャリフ市内環状道路整備計画」で、2015年12月20日(日)、現地で道路の竣工式が行われました。本プロジェクトは市内南部の環状道路6.4kmの未舗装道路に4車線の舗装工事を行ったもので、コミュニティの生活道路として、地元住民はもとよりマザリシャリフ市を含むバルフ県の人々から大きな感謝をいただきました。アフガニスタンでは治安が益々悪化する傾向にあり、邦人コンサルタント及びJICSが、遠隔監理という難しい状況の中、アフガニスタン政府関係者および現地建設会社の協力の下、困難を一つずつ乗り越え案件を進めていることをご紹介します。

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道路舗装工事前の状況
(2013年7月)
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舗装道路完成後の道路状況
(2016年1月)

1 プロジェクトの特徴

 本プロジェクトは紛争予防・平和構築無償資金協力(17.51億円)とノン・プロジェクト無償資金協力見返り資金(5百万USドル)の2つの資金源から構成されております。無償資金協力では、環状道路の路床工事、路盤工事、配水溝工事及び内側2車線の舗装工事に活用し、見返り資金は外側2車線の舗装工事及び歩道工事に使用することが両政府間の話し合いで決定されました。

2 現地調査

 JICSは2011年9月、アフガニスタン都市開発省と紛争予防・平和構築無償資金協力については調達代理契約、見返り資金プロジェクトについては覚書を交わし、業務をスタートしました。まずは、邦人コンサルタントと契約を締結し、邦人コンサルタントによる本格的な現地調査(2012年8月〜12月)の側面支援を行いました。この頃からアフガニスタンでは首都カブールなどの治安が悪化し始め、邦人コンサルタントの現地調査では、日本政府の指導の下、安全を確保するため、JICSが契約した民間警備会社による防弾車を配置し、武装警護を帯同させて万全の態勢を取りました。

 その後JICSは、入札により施工を担う現地建設会社を選定し、2013年8月に施工契約の締結に至りました。

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第三国(ドバイ)での4者協議 (都市開発省、施工会社、コンサルタント及びJICS職員。2015年9月)

3 遠隔施工監理の苦難

 2013年の工事開始後、邦人コンサルタントは当初、カブールに駐在し、マザリシャリフ(現場)を定期的に訪問し、監理する予定でした。しかしながら、前出のとおり治安が悪化していく状況から、アフガニスタン国内駐在を断念し、隣国のタジキスタン(ドシャンベ)に事務所を構えて遠隔施工監理を実施してきました。

 施工監理を担う邦人コンサルタント(現場責任者)及びJICSは、現場の状況を直接確認することができない歯がゆい状況の中、関係者とのコミュニケーションを電話やメール等で密に行いました。しかし、プロジェクトを円滑に進めるためには、アフガニスタン政府関係者を始め、建設会社と直接面談し、設計変更の詳細説明や先方政府実施機関の承認を得ることが度々必要となりました。そのため2014年7月から、必要に応じて、第三国(ドバイ)で都市開発省、施工会社、コンサルタント及びJICSの4者会議を実施してきました。

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完成したばかりの交差点(ラウンドアバウト)を走行する車両及び歩行者

4 設計変更

 本プロジェクトの道路周辺には多くの住民が居住しています。そのため、道路が舗装されることへの期待度は極めて高いものでした。しかし、工事が実際に始まると、予期せぬ程の軟弱地盤に直面し、膨大な量の不良土の入替えが必要となる等、様々な問題に直面しました。その他、工事期間に地元マザリシャリフ市役所から、交差点(ラウンドアバウト)やバスの駐車帯の増設等、幾つか要望がなされましたので、地域住民の利便性に配慮し、要望に応じられるところは設計変更で対応してまいりました。こうした苦労を重ねた結果、2015年12月に本線部分が完成しました。

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2015年12月20日、関係者による竣工式式典
サダット都市開発大臣、アタ・バルフ県知事等が参加されました

5 竣工式における感謝の声

 2015年12月20日、都市開発大臣及びバルフ県知事等が出席され、盛大なセレモニーが実施されました。地元住民からは「やっと、素晴らしい道路が完成され、生活が便利になって嬉しい。」、政府関係者から「アフガニスタン全体の治安悪化でアフガニスタンから撤退するドナーがある中、日本がアフガニスタンを見捨てずに支援してくれることに感謝する。」、「これまで市街地を走っていた郊外の工事用車両が環状道路を走るようになり、市街地での歩行が安全になった。」という声が寄せられました。また、今回の竣工を記念して、道路上のラウンドアバウトの一つに記念碑が建てられました。感謝の辞が英語、現地語(ダリ語、パシュトー語)の3つの言語で記されています。

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竣工式での記念碑除幕

6 その他

 先方実施機関の協力の下、本プロジェクトに付随する付帯工事(学校や病院へ連結するコミュニティ道路の一部舗装工事等)の追加工事を、残余金を活用して実施中です。

プロジェクト基礎情報

案件名 マザリシャリフ市内環状道路整備計画
交換公文署名日 2010年3月22日
供与(E/N)額 紛争予防平和構築無償資金協力17.51億円
ノン・プロジェクト無償資金協力見返り資金5,000,000US$
調達代理契約 2011年9月7日
契約相手 アフガニスタン・イスラム共和国都市開発省
実施機関 都市開発省(及びマザリシャリフ市役所)
プロジェクト概要 マザリシャリフ市内の環状道路南部約6.4キロメートルの路床・路盤工事、舗装工事、歩道工事、排水溝工事
JICSの役割 供与資金の管理、及びプロジェクト(施工)の進捗監理等。
調達内容 マザリシャリフ市内の環状道路南部約6.4キロメートルの路床・路盤工事等。