食糧援助(平成30年度および令和元年度分)
途上国の国民の生活に欠かせない食糧を扱う調達代理機関の使命と責任

2024年12月11日

多様な関係者と緊密に連携柔軟性と工夫で困難を乗り越え、迅速にコロナ禍での実施体制を確立

初めての緊急事態宣言が発令されたとき、先行き不透明な状況でしたが、「食糧援助を止めるわけにはいかない。何としてでも案件を計画通りに進める」という、この事業を担う調達代理機関としての使命を、まずは団内で共有しました。

しかし、初めて経験する世界的な異常事態下で円滑に食糧輸送ができる確信はなく、大至急、主要な港の状況を調査し、輸送ルートが機能していることを確認しました。次に、手続きを根本的に見直し、入札者の方々が直接、書類を持参することなく応札可能な仕組みを急ピッチで整備しました。

こうした各担当者の努力と、国内外関係者との緊密な連携により、コロナに起因する中断や遅延を一切起こさずに、2020年度に調達手続きを実施した全13カ国向け食糧援助を無事、終えることができました。

被援助国の食糧安定供給のため、持ち前の柔軟性や迅速性を活かし、今後もあらゆる困難に立ち向かっていきたいと思っています。

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小樽港で積み込まれるトーゴ向け日本米
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仙台塩釜港で船積み中のモーリタニア向け日本米
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船積み前検査

案件の円滑な進行に向けて食糧という、国民生活における最重要物資の調達を担う使命

2020年は、世の中のあらゆる仕事や事業の進め方が一変した年でしたが、JICSが取り組む食糧援助事業についても、大きな変革を求められた挑戦の年となりました。

食糧援助の実施にあたっては、被援助国との協議や受け入れ態勢の調査のため、案件の開始初期に現地へ出張する必要があります。しかし、海外渡航に大きな制約のある状況下、こうした現地出張が行えないという課題が生じました。また、日本国内の業務においても、人と人との接触機会を減らすことが求められるなか、入札に際してそれまで当然のように行われていたさまざまな書類の受け渡しや入札会を、どのように執り行うかの問題に直面しました。

他方、食糧は被援助国の国民生活にとって最重要物資のひとつですので、実施体制の練り直しのために事業は止められず、時間の猶予がない状況で、迅速にこうした課題に対処していく必要に迫られました。

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ニジェール国とのオンライン開催コミッティ

案件概要

柔軟性と迅速性で世界的危機下の困難を乗り越える

食糧援助は、開発途上国の食料不足の緩和と、人間の安全保障や紛争予防という観点から、開発途上国の安定への貢献を目的とする無償資金協力です。JICSは20年前の2001年度から二国間の食糧援助に関与しており、被援助国の代理人として毎年およそ15カ国向けの食糧調達を行っています。Basic Human Needs(BHN)のひとつであり、被援助国の国民生活に欠かせない米や小麦など食糧の調達を担う役割ですので、ほかの無償資金協力と比べても、とりわけ迅速性と厳格なスケジュール管理が求められます。

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水野在ハイチ日本国大使による納入された米の視察
(提供元:在ハイチ日本国大使館)