エルサルバドル JICSが調達したMRIが小児科病院で活躍中!
2016年2月22日
エルサルバドルのベンハミン・ブルーム国立小児科病院では、MRI※1が配備されておらず、子どもに対するCTスキャナー※2の使用は放射線量の負担が大きいことが懸念されていました。また、MRI撮影が必要な場合、子どもたちを他の病院に搬送していましたが、リスクが高いため、撮影可能な子どもが限定されており、これらの理由などから同病院では、MRIの導入が強く望まれていました。
JICSは日本のODA(政府開発援助)プロジェクトでMRIとその周辺機器(人工呼吸器、麻酔器、ストレッチャー、車椅子など)を調達し、撮影時に必要な機材一式が2016年7月にこの病院に届けられました。その後MRIの操作研修を実施したのち、病院での本格的な活用が開始されました。MRIの導入によって、多くの子どもたちが安全に体内の断層画像を撮影できるようになり、より良い治療に繋がっています。
(1) 導入されたMRIなど機材一式
(2) MRI操作の研修
この研修もプロジェクトに含まれています。
2017年1月23日には、供与式が開催され、エルサルバドル政府より、ビオレタ・メンヒバル保健大臣、アルバロ・サルガド院長、日本側より田良原政隆在エルサルバドル日本国大使をはじめとした関係者が出席しました。現地での注目も高く、多数のメディアが取材に訪れ、式典翌日には、主要紙全てが記事を掲載しました。残念ながらJICSの担当者は参加できませんでしたが、現地でMRIの活躍が注目されていることをとてもうれしく思っています。
(3) 田良原大使のあいさつ
(4) メディアの取材に応じる田良原大使、
メンヒバル大臣、サルガド院長(左より)
(1)、(3)、(4)の画像提供:在エルサルバドル日本国大使館
このプロジェクトは日本のODAのなかでも「医療機材ノン・プロジェクト無償資金協力」と呼ばれています。日本政府の資金援助により、医療設備が不十分な途上国で日本の優れた医療機材を導入し、現地の保健分野の取り組みを支援すること、加えて日本企業製品の調達により、日本企業の海外進出を支援することを大きな目的としています。
JICSの役割は日本政府からエルサルバドル政府に援助された資金を管理し、エルサルバドルで必要とされていたMRIなどの調達やプロジェクトの工程管理、関係機関との調整や報告などを行うことです。「エルサルバドル政府の代理人」として行う調達業務であることから、このような業務は「調達代理業務」と言い、エルサルバドル政府とJICSの間で契約を交わし、実施しています。
今回、JICSにとっては、初のMRI調達で、日本メーカーからの情報収集とあわせて、現地でMRIが設置されている他の病院の訪問なども行い、入念に事前準備を行いました。JICSは特定の機材や技術の専門機関ではありませんが、被援助国政府の代理人として、高度な専門機材の調達を行うケースがあります。その場合、コンサルタントやメーカーの協力を仰ぎつつ、必要な対応や対策を行ったうえで、迅速かつ効果的な調達を実施しています。
また、調達代理業務では、日本の公共調達などと同様に、入札※3という手続きによって機材などを納入する企業(サプライヤー)と契約します。このプロジェクトではその国の地域性や実状に見合った適正価格、適正品質の調達を実現するのみならず、日本企業の海外進出を見据えて、より多くの企業に関心を持っていただくことも重要です。そのため、今回は日本から遠い中南米地域の経済規模が大きくないエルサルバドルであることから、納入条件の設定や確認などに苦労しました。
現在、JICSは世界各地で同じ取り組みに携わっており、他国でもMRIの調達を進めています。今回のプロジェクトで得た経験や知識を活かしつつ、現地の保健分野の発展と日本企業の海外進出における、大きなステップとなることを目指して案件を実施しています。
※1 MRI:磁気共鳴画像(装置)。MRI検査では、磁場と電波とコンピューター処理により人体の断層を画像化する。
※2 CTスキャナー:コンピューター断層撮影装置。主にX 線の回転照射による撮影とコンピューター処理によって人体断面の平面画像を得る医療機器。
※3 入札:物品の購入などに際して、複数の候補者から金額などを提示してもらい、もっとも有利な内容の相手と契約する手続きのこと。
プロジェクト基礎情報
案件名 | 医療機材ノン・プロジェクト無償資金協力 ※ノン・プロジェクト無償資金協力についてはこちらのページをご覧ください。 |
政府間決定日 | 2013年3月20日 |
供与(E/N)額 | 4.00億円 |
調達代理契約 | 2013年11月5日 |
プロジェクト概要 | MRI(人工呼吸器・麻酔器・ストレッチャー・車椅子含む)、CT、救急車、外科用Cアーム、回診用X線、バイタルサインモニタの調達と操作研修の実施。 |
JICSの役割 | エルサルバドル政府(保健省)の調達代理機関として、MRIなど機材の調達、操作研修のコーディネート、プロジェクト監理および資金管理を担当。 |