TICADの取り組みを「カタチ」へ
-TICAD7は2019/8/28〜30に横浜で開催-

TICADについて

 2019年8月28日(水)〜30日(金)まで横浜市のパシフィコ横浜でTICAD7(第7回アフリカ開発会議。TICADは,Tokyo International Conference on African Development の略)が開催されます。TICADは日本が立ち上げたアフリカ開発に関する首脳レベルの国際会議ですが、関係国政府だけでなく、開発に携わる国際機関、民間企業、市民社会も参加する包摂的かつオープンなフォーラムです。

 これまでのTICADを通じて,アフリカ開発におけるアフリカ諸国の「オーナーシップ」と、国際社会による「パートナーシップ」の重要性が提唱、共有、浸透されており、これらを具現化する取り組み(ODAなど)も数多く実施されてきました。また、日本政府等の取り組みについて、閣僚級会合での確認を含めたフォローアップが実施されていることもTICADの大きな特徴です。

TICADとJICS

 JICSは、日本政府がこれまでのTICAD(アフリカ開発会議)で表明したアフリカに対する支援を具現化するODA無償資金協力プロジェクトに、調達代理機関として携わってきました。

 調達代理機関は被援助国政府の代理人としてさまざまな機材の調達や施設建設のマネジメント、日本政府から援助された資金の管理などを行っています。

 日本のODAのルールを熟知し、豊富な経験を有するJICSは、ODAに必要とされる公正性や透明性等を確保しつつ、スピーディーかつ効果的にプロジェクトを実施しています。

 以下、近年JICSが調達代理機関として携わるプロジェクトの一部をご紹介します。TICADにおいて日本政府が表明した支援はさまざまなプロジェクトを通じて、着実に「カタチ」となってアフリカの国々に届いています。

1. 質の高いインフラ

ジブチ

9: 産業と技術革新の基盤をつくろう

 エチオピアに繋がるジブチの主要幹線道路「国道一号線」の損傷の著しい区間20kmを改修するプロジェクトであり、「アフリカの角」地域の物流円滑化、ひいては日本が掲げる自由で開かれたインド太平洋の実現が期待されています。調達代理機関、コンサルタント、施工のすべてが日本法人のオールジャパン体制で「質の高いインフラ」支援に取り組んでいます。ジブチ政府の期待も非常に高く、ジブチ設備運輸省、在日本ジブチ共和国大使館とともにプロジェクトの推進に尽力しています。

(写真)
主要幹線道路改修の完成予想図(提供:八千代エンジニヤリング株式会社)
被援助国 ジブチ
プロジェクト名 経済社会開発計画(平成30年度)
供与金額 39.0億円
日本政府がTICAD6で表明した支援 「質の高いインフラ投資」推進による連結性の強化
プロジェクト内容 国道一号線(道路)の、特に損傷の著しい約20km区間の改修。

2. 優れた技術による質の高い日本製品の導入

 近年、TICADを通じた取り組みとして、優れた技術による質の高い日本製品を調達するプロジェクトが多く実施されており、それらの活動について、被援助国政府、エンドユーザー(例:学校等)等から感謝をいただいています。そしてプロジェクトの効果的、効率的な実施にJICSの能力が発揮されています。特に、プロジェクト開始後、調達する製品(品目)の詳細を決定する段階では、JICSが被援助国の要請に基づき、条件に合う日本製品やそのメーカー等の情報収集のほか、使用環境、必要なスペアパーツやメンテナンス、操作可能な技術者数等も調査し、被援助国政府に情報提供やアドバイスを行います。数十種類の機材を同時に調達することもありますが、さまざまな機材の調達経験を持ち、日本の中小企業、地方企業を含むメーカーや製品情報、仕様情報を蓄積しているJICSだからこそ、円滑にプロジェクトを進められるのです。

プロジェクト事例
(1)モロッコ

4: 質の高い教育をみんなに

 日本の中小企業の高性能スキャナーなどがモロッコ王立図書館や学校機関に導入され、デジタル化された稀少資料やさまざまな教材等が地方からでも閲覧可能になること、また日本の中小企業のさらなるモロッコ進出支援としても期待されています。モロッコに対しては、同じくTICAD6における日本政府の取り組みの具現化として、環境問題や気候変動への対応機能を高め、日本企業の海外展開支援への寄与を目的とした次世代自動車の調達(「経済社会開発計画」)も実施され、JICSは調達代理機関として関わりました。

被援助国 モロッコ
プロジェクト名 経済社会開発計画(平成28年度)
供与金額 1.0億円
日本政府がTICAD6で表明した支援 アフリカ諸国の優先課題の一つとされた「経済多角化・産業化を通じた経済構造改革の促進」
プロジェクト内容 日本の中小企業の高性能スキャナーや書籍修復機材、集塵機等をモロッコ王立図書館、学校機関に導入。
(写真)
モロッコ国立図書館に導入されたトレイ付書籍修復テーブル
(写真)
国立美術学校での集塵機使用トレーニングの様子
(提供:オガワ精機株式会社)

(2)ケニア

2: 飢餓をゼロに 9: 産業と技術革新の基盤をつくろう 15: 陸の豊かさも守ろう
被援助国 ケニア
プロジェクト名 中小企業ノン・プロジェクト無償資金協力(平成26年度)
供与金額 2.5億円
プロジェクトの目的 日本の中小企業製品の供与を通じて、農業生産性の向上、森林率の増加及びインフラ整備に寄与すること。また、これらの製品に対するケニアにおける認知度を高め、継続的な需要を創出し、中小企業の海外展開の支援に寄与すること。
プロジェクト内容 日本の中小企業の農業、道路関連機材等の供与。
(写真)
気象観測装置の設置作業
(提供:日世貿易株式会社)

 このプロジェクトでは、気象観測装置、粉摺機、卓上遠心機、自発光道路鋲等、複数分野にわたる日本の中小企業製品を40品目以上調達し、現在ケニアの灌漑公社、森林研究所、道路公社で活用されています。

3. 食糧援助

モーリタニア

2: 飢餓をゼロに

 国土の多くが砂漠に覆われ、干ばつ等の気象要因も重なり、国民の約20%が食料不足の状態にあるモーリタニアに対して日本の政府米が援助されました。

 日本のODAによる食糧援助対象国(食糧不足に直面している国々)の多くは、アフリカにあります。JICSは2017年度以降、アフリカ地域では、カーボベルデ、コモロ、サントメ・プリンシペ、セネガル、トーゴ、ニジェール、ブルキナファソ、ブルンジ、ベナン、マダガスカル、マリ、モーリタニアに対する食糧援助に携わっています。

被援助国 モーリタニア
プロジェクト名 食糧援助(平成29年度)
供与金額 4.8億円
日本政府がTICAD6で表明した支援 アフリカにおける食料安全保障の促進
プロジェクト内容 日本の政府米による食糧援助(約7,750トン)
(写真)
モーリタニアに援助される日本米(政府米)
(写真)
現地に向けて船積み中

4. 保健分野

ギニア

3: すべての人に健康と福祉を

 2014〜2015年にエボラ出血熱の大流行により、大きな打撃を受けたギニアは保健分野の脆弱性が課題となっており、医療機材を調達するための無償資金の供与が決定しました。

 調達後の2019年5月、JICSのプロジェクト担当者が現地病院を訪問した際、日本メーカーの人工透析機器等がフル稼働で活躍している状況を確認できました。

被援助国 ギニア
プロジェクト名 経済社会開発計画(平成29年度)
供与金額 2.0億円
日本政府がTICAD6で表明した支援 公衆衛生危機への対応能力及び予防・備えの強化」及び「アフリカにおけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)推進
プロジェクト内容 医療器材・製品等の供与
(写真)
ギニアの病院で活躍している
人工透析機器

5. 教育(学校建設)

マダガスカル

4: 質の高い教育をみんなに

 2000年代以降、JICSは小学校を中心に、アフリカ地域で多くの学校建設プロジェクトに携わってきましたが、2019年1月に竣工した「マダガスカル第四次小学校建設計画」では、サイクロン対策や車椅子通学者に配慮された校舎を建設しました。パイロット活動対象の1校ではNPO法人「道普請人」が参画し、周辺住民や保護者会等が加わり、通学途中の悪路を土のうで整備する取り組みも実施しました。

(写真)
完成した、2階建て校舎
被援助国 マダガスカル
プロジェクト名 第四次小学校建設計画
供与金額 8.6億円
日本政府がTICAD6で表明した支援 万人が成長の恩恵を受ける社会の構築
プロジェクト内容 小学校合計22校(既存校)の建替え及び増設。

 TICAD7は「Advancing Africa’s Development through People, Technology and Innovation アフリカに躍進を!ひと,技術,イノベーションで。」というテーマの下で開催されます。

 JICSは今後もTICADを通じた、インフラ整備、人材育成、科学技術イノベーションを活用した取り組み等に携わり、アフリカにおけるSDGs達成に貢献していきたいと願っています。