国内勤務者リレーエッセイ No.18
トルコでの防災分野専門家としての活動と防災をライフワークにするまでの道のり

総務部 長谷川 庄司

トルコでの防災分野専門家としての活動

 2013年から3年間トルコ内務省災害緊急事態対策庁(AFAD)に国際協力機構(JICA)長期専門家として派遣されて以来、トルコでの防災分野への支援に携わる機会が続いています。

 当時の活動については「防災を通じたトルコと日本の絆」で紹介しています。

 今年2・3月にもJICAの依頼を受けて調査団としてトルコに行くこととなりました。その滞在中に、トルコ内務省、トルコ自治体連合会およびJICAの共催による「防災ワークショップ」が3月9日(月)、首都アンカラにあるトルコ自治体連合会の大会議場にて開催され、私も発表する機会を頂きました。

「災害リスク軽減に関する日本の経験」と題して、日本の国レベルから地域、地区防災計画の概要、阪神淡路大震災の復興事業、建物の耐震設計までかなり幅広く紹介したつもりです。

 ちょっと緊張したのが、私以外の登壇者は、内務大臣、環境都市整備省副大臣、AFAD長官、宮島昭夫駐トルコ日本国大使、アンタルヤ県知事、ドュズジェ市長、サカリヤ市長、マラトゥヤ市長、ガーズィオスマンパシャ市長と錚々たるメンバーで、私みたいな一人の防災実務者が偉そうに発表していいものかと戸惑った次第です。

 その時の様子が、トルコ自治体連合会により、YouTubeに掲載されていましたので、ご覧ください。


トルコ スレイマン・ソイル内務大臣による
スピーチ

400名がセミナーに出席

著者は、災害リスク軽減における日本の事例紹介を行った

トルコ内務省、トルコ自治体連合会およびJICAの共催による「防災ワークショップ」
外部サイト:

日本で採択された国際的な防災指針のターゲットをトルコでも実現を目指す

 また、今回のトルコでの調査業務の大きな目的は、2015年3月に開催された第3回国連防災世界会議で採択された国際的な防災指針である「仙台防災枠組2015-2030」のグローバル・ターゲットE「2020年までに、国家・地方の防災戦略を有する国家数を大幅に増やす」をトルコ国で達成するための支援を検討することでした。

 トルコ国では、緊急対応計画は既に国家および81県全てで完成していますが、いわゆる事前の準備を含めた防災計画は国家レベルでは現在最終承認中で、県防災計画はまだ1県しか完成していない状況です。

 前述したとおり、2013年から3年間AFAD本部にJICA専門家として派遣され、技術協力プロジェクト「リスク評価に基づく効果的な災害リスク管理のための能力開発プロジェクト」に携わり、県レベルの防災計画を策定するためのガイドラインの作成支援を行ってきました。

 そのような中、JICAトルコ事務所はAFAD本部と協議し、このガイドラインを活用して、アフィヨンカラヒサル県での県防災計画の策定をお手伝いすることになりました。

 2月11日にはアフィヨンカラヒサル県の防災関係者への防災計画策定への協力依頼説明会を、また2月14日には防災計画策定のための防災セミナーを開催し、約50名が参加するなど、盛況でした。


アフィヨンカラヒサル県の防災関係者への防災計画策定への協力依頼説明会に著者が出席
(左から2人目、資料を掲げつつ説明)
アフィヨンカラヒサル県の防災計画策定への防災セミナーにて著者が発表

トルコの防災計画策定工程にも新型コロナ・ウイルス感染症の影響

 本来なら、再度アフィヨンカラヒサル県へ出向き、この防災計画策定の支援が計画されていたのですが、「コロナ禍」のために、それもままならない状況です。私がトルコに行けないのもありますが、トルコ国はコロナも緊急事態災害の一部とみなし、AFADはトルコ国内の重要なコロナ対策の一端を担っているため、現在は県防災計画策定に十分な職員を配置できない状況が続いています。

 トルコと日本でのコロナ禍に一段落の兆しが見えたら、直ぐにでもトルコに飛んでいき、アフィヨンカラヒサルAFADの人達と協力して、アフィヨンカラヒサル県防災計画を今年中に完成させたいと思いながら、状況改善を願っている毎日です。

防災をライフワークにするまでの道のり

 ちょっと話題は変わりまして、なぜ私が防災を今後のライフワークにしようと思ったのかを書きたいと思います。

 現在、私は防災業務に主に従事していますが、大学でも土木を専攻し、就職先は土木業界、JICA無償資金協力事業の実施状況調査を行う初代資金協力技術専門員としてケニアに派遣されたり、アフガニスタン復興支援のために「インフラ支援」担当として2002年から2年間アフガニスタンに派遣され、支援国間のインフラ整備の調整にあたったりなど、2004年までは防災には全く無縁の世界で過ごしてきました。

独立行政法人国際協力機構(JICA)広報資料 アフガニスタン支援−復興から開発に向けて−にて、インフラ担当専門家としてコメントを掲載
外部サイト:


カンダハル・カブール(KK)間幹線道路補修計画の完成を祝う
(著者前列左から4人目)

2003年1月1日の初日の出
(著者右から3人目)

 そのような私の状況を一変させたのが、2004年12月26日に発生した「スマトラ島沖大規模地震およびインド洋津波災害」です。私は2005年1月5日から被災地を訪問し、必要となる物資の確認等を調査しました。その後、日本国政府は被災国である「インドネシア」「スリランカ」「モルディブ」に対するノン・プロジェクト無償資金協力を行うことを決め、JICSが被災三国の調達代理機関として、必要となる物資及びサービスの調達、資金の管理を行うこととなりました。

 私も、この支援業務に携わることになり、インドネシアのバンダアチェ(最大被災地)に2年半ほど滞在しながら、復旧・復興事業に関わりあってきました。その当時、復旧・復興事業に関して協議を行ってきたアチェ・ニアス復興庁のクントロ長官とは、その後もメール等で連絡を取れるような間柄になりました。2015年3月に開催された第3回国連防災世界会議で採択された国際的な防災指針である「仙台防災枠組2015-2030」において、世界中に示された復興過程における新しい考え方「Build Back Better」という言葉を最初に使ったのも、このクントロ長官です。

日本赤十字社開催の「スマトラ島沖地震・津波災害復興支援」から見えてきたもの〜湯指揮者座談会で意見交換〜に著者も出席
外部サイト:赤十字国際ニュース2010年第72号 2010年12月24日


インドネシア西海岸道路起工式2005年(著者は右から2人目)

 このインドネシアでの復興事業に携わりながら、おぼろげに考えていたのが、「災害が発生する前に、事前の防災事業を進めたほうが良いのでは?」ということです。また「海外での経験はあるが、日本での防災事業の知識はほとんど持っていない」という自分への問いかけから、インドネシアからの帰国後、日本の大学(首都大学東京、現在の東京都立大学)で防災について一から勉強を始めました。

 この大学での勉強や、在学中に発生した「東日本大震災」での現地調査への参加経験が、今の私の強みになっているかと思っています。

 さらに在学中に以前から入っていた学会以外に、防災関係の学会に入り、論文投稿や発表の機会を得たり、学会が催すさまざまなイベントに時間の許す限り参加したりしています。このようなイベントでは、他の大学の防災専門家とも知り合うことができ、自分への刺激になっています。私は以下のような防災関係の学会や団体への参加や資格取得・情報収集を通して、これからも貪欲に防災関連の知識を身に着けていこうと考えています。

  • 土木学会
  • 日本都市計画学会
  • 日本建築学会
  • 地域安全学会
  • 日本災害復興学会
  • 地区防災計画学会
  • 日本危機管理防災学会
  • The International Emergency Management Society
  • 防災科学技術研究所 気象災害軽減コンソーシアム
  • 防災教育普及協会
  • 防災士(日本防災士機構)
  • 危機管理士1級(日本危機管理士機構)

海外の防災分野における「協働」に邁進

 一方、このような経験をどうやって実務で活かしているのかですが、私の場合は、実践の場としてJICA防災専門家としてトルコ「内務省災害緊急事態対策庁(AFAD)」に2013年から3年間派遣され、災害リスク評価や地域防災計画策定のお手伝いをしてきました。トルコの後は、2017年から2年間パキスタン「国家防災管理庁(NDMA)」に派遣され、同国内の防災人材育成プロジェクトに携わってきました。

 今後も私自身は日本での防災の勉強を続けていくつもりですし、その成果をもとに海外での防災分野での協働に邁進していく所存です。防災は専門家として押し付けるものではなく、その土地にあった防災を一緒に考えていくことが大事だと思っていますので、防災支援という言葉は使いたくなく、協働という言葉を使いたいです。

 幸いにも私が所属しているJICSは、防災分野の施設整備や機材調達等での経験も豊富で、ハード面での専門家もたくさん揃っています。今後は私自身の防災分野での経験や、JICSの専門家の知識を総動員して、世界中のコロナ禍や各種災害に苦しんでいる人たちの役に立てるように努力していきたいです。

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