5月18日、19日 第8回太平洋・島サミット開催
JICSが携わる太平洋島嶼国へのODA案件をご紹介します

2018年5月8日

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サイクロン「ジータ」被災のトンガで愛媛の中小企業の大型テントが代用教室(学校)として活躍中。

第8回太平洋・島サミットの開催とJICSが携わる太平洋島嶼国へのODA案件について

 2018年5月18日、19日に日本と大洋州の17か国の首脳が参加し、第8回太平洋・島サミット(PALM8)が福島県いわき市で開催されます。

 太平洋・島サミットは太平洋島嶼国・地域が直面する様々な課題について首脳レベルで解決策を議論し、日本と太平洋島嶼国の協力関係を強化するため、1997年から3年に一度、日本で開催されています。

 2015年に開催された第7回太平洋・島サミットでは、日本政府から①防災②気候変動③環境④人的交流⑤持続可能な開発⑥海洋・漁業⑦貿易・投資・観光の7分野に焦点を当てた協力の推進、以後3年間での550億円以上の支援および4,000人の人づくり・交流支援が表明されました。

 この支援の一部として、日本政府は各国に対して現地の課題解決に役立つ機材などを調達するための資金援助を行いました。その援助の中には、日本の防災機材や中小企業製品などを指定して調達し、日本企業の海外展開支援も目的とした取組みも多くあります。 私達日本国際協力システム(JICS:ジックス)はこの援助において、日本政府から資金援助を受けた太平洋島嶼国政府の代理人(調達代理機関)となり、援助された資金の管理や機材の調達などを行っています。

 今回は、太平洋島嶼国への日本政府の援助や調達代理機関JICSの役割についてご紹介します。

日本の防災機材がサイクロン「ジータ」被災のトンガで活躍―大洋州で、日本のODAは大きな役割を担っています―

 2018年2月12日(現地時間)、太平洋の島国で人口約10万人のトンガにサイクロン「ジータ」が上陸し、2月16日時点で、被災者は約4500人、被災家屋は約1300戸という甚大な被害を受けました。

 そのような中、2月17日、トンガ緊急事態管理庁(NEMO Tonga)は、クレーン、給水車、トラック、大型テントなどが調達された日本の政府開発援助(ODA)「防災機材ノン・プロジェクト無償資金協力」について、感謝のコメントとともに日の丸と「From the people of Japan」と記載されたステッカーが貼られている大型車両が救援物資を届けている写真をFacebookに投稿しました。投稿では、「日本の人々からの支援がなければ、瓦礫が散らばり、泥だらけで、水没した道路を走る(ことができる)大型の車両はなく、救援物資の運搬は不可能だったであろう。」と述べています。

 このプロジェクトは、サイクロンなど自然災害のリスクが高く、災害対策に課題を抱えるトンガに対して、日本の優れた防災機材を購入し、トンガの災害対策を支援するために日本政府がトンガ政府に3億円を供与したものです。JICSはこの供与の決定後、トンガ政府と契約を交わし、トンガ政府の代理人(調達代理機関)となって、日本から援助された資金を管理し、クレーンや大型テントなどを調達しました。

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大型テントで授業を受ける子どもたち
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大型テントはJICA実施の緊急援助で届けられた
救援物資の一時保管場所としても活用
(写真提供:NEMO Tonga)

 JICSは現在もトンガに対する複数のODAプロジェクトに携わっていますが、「ジータ」上陸後、トンガ政府の担当者と連絡がつかず心配している中で、この投稿により調達した機材が活躍したことを知りました。太平洋島嶼国に対して日本製の資機材を調達するODAプロジェクトは1案件1億〜3億円程度でODAとしては大規模ではありません。しかしトンガを含む日本の市町村規模の人口、面積の太平洋島嶼国(人口が約1万人の国もあります)にとって、これらのプロジェクトは命や生活に関わる重大な役割を果たしていることを改めて確認し、調達機関として、責任の重さを痛感しました。

 4月9日まで続いた非常事態宣言や首都ヌクアロファの夜間外出禁止令は解除され、JICSのプロジェクト担当者もトンガ出張を再開しましたが、現在も現地では被災された方々がJICSが調達した大型テントや発電機、チェーンソーなどを利用しています。

 愛媛県の中小企業の大型テントは学校の教室としてだけでなく、被災後、国際協力機構(JICA)が実施した緊急援助で届けられた救援物資の一時的な保管場所としても活躍したと緊急事態管理庁から報告され、日本からの事前の防災機材の援助と被災後の緊急援助による手厚い支援、機材の活躍に対する深い感謝の言葉も述べられました。

 今回の被災状況や機材の活用状況などを踏まえ、太平洋島嶼国を頻繁に襲う自然災害に備えるため、JICSはこれらの国々で関わっているプロジェクトを少しでも早く、より効果的に調達を実施できるよう今後も努めてまいります。

トンガ緊急事態管理庁の2月17日のフェイスブック投稿

JICSは調達代理機関として120カ国以上での実績を生かし、より効果的・効率的な調達を実現

きめ細やかな調達

 太平洋島嶼国の中には、人口や国土が日本の市町村規模という国も多く、同じ製品を大量に調達しても余ってしまったり、操作が難しい機械などは経験豊富な人材がおらずうまく使用できないことがあります。JICSは調達前に現地で要請機材が、どのように利用されるかなど綿密な調査を行います。その結果、各製品の調達数量を少なくして、多種類の調達をすることも多く、時には1つのプロジェクトで数十種類の調達を行うこともあります。相手国政府の代理人として、より効果的な援助を目指し、きめ細やかなサービスを心がけています。

同じ地域の多数の国々の調達を担当し、そのノウハウを次の調達、他国の調達に生かす

 JICSは太平洋やカリブ海の島嶼国での機材調達プロジェクトを多数担当しています。それぞれの地域は離れていますが、小さな島嶼国特有の自然災害対策など共通の課題を抱えています。調達した機材の評価や効果、課題などは確認・共有し、その後の他地域も含むプロジェクト実施に生かしています。

複数のプロジェクトで連携した効果的な調達

 JICSは調達代理機関として継続的に大洋州島嶼国のプロジェクトに携わっていますが、複数のプロジェクトで調達した機材を組み合わせ、より効果的に活用する取り組みを行っています。

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道路整備のためエクスカベーターから
ダンプトラックに積込作業中

ミクロネシア
【人口約10万人、面積約700平方キロメートル(奄美大島の面積約712平方キロメートルに近い)】

 東日本大震災被災地の製品を調達するプロジェクトではエクスカベーターを調達し、その後の日本の防災機材を調達するプロジェクトでダンプトラックを調達。両者を組み合わせて活用し、道路整備の資材運搬などが効率的に実施できるようになりました。

機材の「仕様」のスペシャリスト集団が調達、そして日本企業の海外展開をバックアップ

 JICSは相手国政府の代理人として入札手続きによる機材調達を行うことから、幅広く機材の情報を収集・蓄積しながら、入札時に提示する調達予定機材の機能、設置条件など詳しい条件を記した「仕様書」の作成を行います。JICSは機材メーカー出身者などが所属する専門部署を持ち、最新の高度な機材の調達にも対応しています。近年は日本企業の海外展開支援も目的とした日本製品の調達プロジェクトにも多く携わり、日本の地方企業や中小企業製品についても幅広い情報収集や調査を行っています。

機材のメンテナンスに関する工夫

 日本企業の海外展開支援も目的に含む、日本製品調達プロジェクトを多数担当していますが、メーカーの方からは太平洋島嶼国への輸出について、アクセスや市場規模の問題から、メンテナンス対応が難しいなど慎重な意見を伺うことがあります。JICSでは、一定量のスペアパーツ調達に加えメーカー担当者による現地メンテナンス研修を実施することなどで対応しています。また比較的メンテナンスが容易な製品の情報収集や調達も行っています。

 例えばトンガの記事でご紹介した愛媛の中小企業の大型テントや山形の中小企業の手術用メスなどは、使用されている方々の評価も高く、複数の国で活用されています。

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